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□burning lonely boy
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「…言ってろ。ほら、薬持って来てやったから飲んだらさっさと寝ろ。この部屋が嫌なら自分の部屋にでも戻れ。修復は済んでいるらしいからな。」

「いらない。」

「何?」

「施しなんていらない。てか、それ以前にお前に何かを与えられること自体が嫌なんだけど?」

「何を言おうと貴様の勝手だが、たかが風邪ごときで能力の制御が出来なくなっている今のお前には何の説得力もない。ただの負け犬の遠吠えだ。」

「うざい。もーいいよ。自分の部屋に戻ればいいんでしょ?お望み通り直ぐにでも出てってあげるよ。」


辰伶が、というより、寧ろオレがこの部屋から出るのを望んでいるのかもしれない。
どくんどくん煩いんだ、オレの胸(ここ)。
身体を起こしたら、自分が寝ていたところにくっきりと焦げた後があった。
オレの体温何度ぐらいだ?


「っ…」


立ち上がった瞬間、身体の力が一気に抜けて、こけた。
じん…と着いた手のひらから痛みが伝わった。


「熒惑?!」


さっきまでは口調も態度も冷たかったくせに。
こけたぐらいで焦ってあたふたしないでよ。
馬鹿にしたように哂って、苦笑して、静かにに引っ張り起こせばいいじゃん。
どうせ、かなり弱ってるからってだけなんでしょ。
お前が不気味なぐらい優しいのは。


「…余計なことしないでよ。」

「強がって気丈に振舞うのも貴様の勝手だ。だが、身体が付いて来れていなければ意味を成さないだろうが。もう一度言う。早く薬を飲んで寝ろ。」

「従わなかったらどうする気?水龍を頭から被せる?そのまま放置する?」


ほんの一瞬、辰伶の顔が悲しげに歪んだ。
直ぐにいつものしかめっ面に戻ったけど。


「下らない事を言うな。」

「………偽善者。」


最大の侮蔑をこめて吐き捨てた。
視界に霞がかかり、一瞬くらり、とした。
身体が熱い。熱、ぶり返してきたんだ。
身体の中も外も焼けつくされてるような感覚、酷く喉が渇く。
まだ、コントロールの制御が完全でない黒い炎 アレを出しているときの方が、まだマシかもしれない。


こんな惨めなところ、これ以上見られたくない。
見られてたまるか。


ねぇ、辰伶…さっさとオレの前からいなくなってよ。
これ以上オレの領域(なか)に踏み込んでこないでよ。


「いい加減にしろ!!」


怒りの感情をあらわにして怒鳴りつけ、胸倉を掴んできた。
そう、そのまま一発ぶん殴って、オレを部屋から叩き出せばいい。オレを心配するお前が嫌。オレに怒鳴りつけるお前が嫌。
嫌だ嫌だ嫌だ…

次に飛んでくると思われる拳を待つべく、目を閉じた。


「……?!」


飛んでくるはずの拳はいつまで経っても来ない。
代わりに唇に何かが当たっている、と言うよりも、押し付けられてる。
柔らかいけど、堅くて 冷たいけど、あったかい。
妙な感触に少しだけ、眼を開けた。


「ぅな、…?!」


少しだけど、感触的に心当たりがあったけど、やっぱり驚かずにはいられなかった。
パンチの変わりにキスが飛んでくるなんて奇天烈な予想きっとオレでも立てない。
思わず少しだけ、口を開けたら、一気に何か流れ込んできた。
水…っぽいけど、なんか苦い。
多分薬かなんかが混ぜてあるんだ。

本当は思いっきり突き飛ばして拒絶してやりたい。
舌が入ってこようものなら、噛み切ってやりたい。
とにかく頭の中がぐちゃぐちゃで、訳が分からなくなった。
ソレを体現できなかったのは、きっともう身体が限界だったからだ。そう思わないとやってらんない。

意識が遠のいていく。
次に目を覚ますときっと辰伶はいない そう思ったら………悲しくなった。
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