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□burning lonely boy
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地図に振られた番号は、陰陽殿から城下町そして樹海に近づくにつれて大きくなっている。
並のものなら、既に逃げられた可能性と樹海に入った時点で出来損ないの連中に殺された可能性もでてくるが、念のため、樹海周辺を念入りに調べることにした。
そういえば結局熒惑はどこに行ったんだ…?
たかが5日姿を見せないだけで、ここまで気になるとは…
きっと任務外の理由で消えるからだな。絶対そうだ。
しばらく歩いているとようやく樹海の入り口にたどり着いた。
どうするかなど全く決めてはいなかったが、とりあえず人の気配を探りながら足を進めた。
相変わらずのことだが、この森には昼と夜言うものがないな。
幾ら木々の葉同士が重なり合って光を遮っていると言ってもこの外との明暗の差は何だ。
そして相変わらずここは出来損ないの屍で溢れかえっている。
とくに焼死体がひときわ目立………焼死体?
樹海の住人に火を起こす技術なんて備わっていたか?
いや、別に侮蔑の意味で言ったのではない(少なからずは篭っていると思うが)
あ奴等は火を起こさなくとも己の体が武器そのものであるはずだ。
「この近くにいるというのか…?」
全神経を集中させて、火の気探った。
「…?」
ある場所での火の気が不自然に目立っている。
大きな火事か、火を操る者か…
熒惑の気のような気もする。
ただ、もしその気配が熒惑の物ならばこれは途切れ途切れで物凄く…弱い。
ここで止まっていても時間の無駄だな。
とりあえず今浮き出た可能性の元へ行ってみる事にした。
□■□■
「ここは……」
しばらく歩いて見えてきたのは物置よりも粗末な造りのあばら家だった。
この付近が一番焼死体の数が多いな。
しかも現在進行形で小屋から煙が上がっているじゃないか。
しかも、近づくにつれて熒惑の気がはっきりしてきている。厳密に言えば、ここまで近づかなければ、曖昧で判別し辛かったと言うことになるのだが。
本当にあいつが放火魔なのか…?
警戒を怠らず、小屋の中に侵入した。
入った瞬間、あまりの煙の量にむせ返りそうになった。
視界が紅と白ででよく見えない。
炎が全体に回っているこの小屋はもう崩壊寸前だ。
奥へ進むと、ぼんやりとだが、人影が見えた。
「熒惑…なのか…?」
舞曲水を構えつつ慎重に近づいた。
影は壁に凭れ掛かったまま動く気配がない。
近づくにつれて、白い煙の中から、一瞬金色が見えた。
―――半疑が確定に変わった。
やはり、この火の気は熒惑の物だった。
相手が分かり安心したのか、オレは入ったときよりも、少し警戒を解いて熒惑の目の前まで近づいた。