Text2

□pervard from the past
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「うん、やっぱり可愛い。眺めてるだけでもイける気がするよ」
「ならそのまま逝ってしまえよ」

不意に増えたもう一つの声。振り向くと同時に何者かの回し蹴りがアラウディに直撃し、綱吉の部屋のドアに勢いよく叩きつけられる。
ぱたぱたと頭の上に乗った黄色の小鳥が呑気に校歌をうたい始める。

「んんん!」

言葉にならない声が叫ぶ。
乱入した少年、雲雀は直ぐ様取り付けられたボールギャグを外す。手足を固定する手錠は分かってはいたが自分の炎では取り外せない。自分の武器もアラウディの手錠に違いはないがやはり違うのだろう。トンファーで鎖を粉砕しようと先端に極太の刺をだし、思い切り鎖めがけて振り落とそうとすると、

「ひ、ヒバリさん!」
「何…!?」

がしゃんとトンファーを構える手、そして首に覚えのある冷たい感触が。それを手錠だと理解する前に雲雀は手錠の端を持つアラウディに引き倒された。

「水臭いなぁ。仲間に入れて欲しいなら最初から言えばいいのに」

首と手首の手錠を引きながらアラウディは笑う。もう片方の手にはそれぞれの指に手錠が引っかかっている。ひゅんひゅんと指で手錠を振るたびに明らかにその数が増えているように見えるのは…消して残像のせいではないのだろう。

「なんだったら二人まとめて分縛って可愛がってあげるよ。デーチモの雲だったらうっかり突っ込んで壊してしまっても問題ないし…ね?」
「も、問題しかないです!」
「冗談じゃない。あんたのイカレタ性癖に付き合わせるのはごめんだ。僕も、この子もね」
「どうせ逃げられないんだし大人しくしていなよ。そうしたら子供だし、少しは加減してあげるよ」

腕力だけで雲雀を未だ不格好に転がっている綱吉のもとに引きずり出す。自分で体勢をコントロールできない雲雀はそのまま顔面から綱吉の股ぐらに突っ込み綱吉はさらに涙目になる。あわわ、そんなところ嫌ですヒバリさん!ぼっ僕だって不可抗力だよ!きゃんきゃん泣く綱吉と顔を真っ赤にしてもがく雲雀にアラウディの加虐心はただ刺激されるばかり。さあ誰から引ん剥いてやろうかと口で手袋を外した時、綱吉の首から下げていたボンゴレリングがまばゆい光を放った。

「!」
「リングが…!」

「いい加減にしろ!このアホウディ!」

まばゆい人仮の中から出てきたのは不自然に大きなハリセンでアラウディの横っ面を思いっきりひっぱたいた初代ボンゴレ、ジョットだった。


「…て、ことは貴方がアラウディさんに無茶な禁欲指令を出したことがそもそもの原因ってことですか?!」
「だってあいつの夜の相手は痛くて恥ずかしいばかりでな。少しは考え方を改めない限り寝室に入れないと叩き出してやったのだ!」
「ドヤ顔でいわないでよ、迷惑だから。」

零地点で脚の下もの凍らすぞと脅され漸くアラウディの手錠の拘束から解放された二人は心底つかれたようにため息を吐いた。アラウディはと言うとむっすーとふてくされながら綱吉のベッドで不貞寝をしている。

「ほら、アラウディさっさと帰るぞ。」

さっさと綱吉のリングに帰ろうとするジョットをアラウディはマントを掴んで引きとめる。どうしたのだ、と首をかしげるジョットをアラウディは低い目線からじっと見つめている。

「ねぇジョット…。頑張って優しくするから…禁欲取り消してよ…。僕、もう我慢できない。」

何を思ったかここでアラウディは綱吉のアドバイス通り全力でしおらしくして下手に出てジョットにおねだりを繰り出した。
ちょ、あんたいくらなんでもこの場でそれは不味いだろ!!
と綱吉は内心で突っ込む。表に出す勇気なんてあるわけがない。
綱吉の前できゅんと何ともこの雰囲気には似つかわしくない音がした。ちらりと前を覗き込んでみると顔を真っ赤にして瞳を伏せているジョットがいる。

「…。次痛くしたら本当に叩き出すからな!」

アラウディの(明らかに取ってつけたような)しおらしい演技に見事にだまされたジョットはぎゅううっと抱きしめてプラチナブロンドの頭をよしよしとなでる。
だがしかし、綱吉と雲雀はしっかりと見ていた。ジョットの熱いハグを「計画通り」の顔で笑んで受け止めるアラウディを。
あぁ、こいつ絶対懲りてない。またやる気だ。

いろんな意味でやるせない気持ちになった雲雀と綱吉は乱れに乱れた衣服を直す気にもなれずどうか早くこのはた迷惑な亡霊が帰ってくれないだろうかと願わずには居られなかったという。


ちなみに今回の件で雲雀が一生懸命綱吉がアラウディの毒牙にかからないようにと奔走していたのを知りはれて二人は恋人同士になるのだかが、それはまたいずれ語られることになるだろう。
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