捧げ物
□仲間意識と小さじ一杯の下心
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ゴトッ――
正面から鈍い音がした。
「――…なんだ?」
知人への手紙に集中していたユーリだが物音に思わず顔を上げる。
すると、先程まで目の前の壁に寄りかかって微睡んでいた筈のレイヴンが床に転がっていた。
かなり疲労が溜まっていたらしく、既に寝息のようなものが聞こえてくる。
「おいおい…」
勘弁してくれよとユーリは溜息を吐いて書きかけの手紙を畳むと、椅子から立ち上がった。
「おいこら、起きろ」
とりあえず体を揺すってみるが、もう放っておいてくれと言わんばかりに手を払われる。…全く、いい年のくせに手間のかかる男だこと。
「よっ…と…」
ユーリは仕方ないとこぼしながらレイヴンの体を抱き上げ部屋のある方へと歩き出す。
男を放置するのは簡単だが、これで風邪を引かれては今後に支障が出るのは明らかだったからだ。