text

□あの青を越えて
1ページ/11ページ


どこまでも続く
この果てしない空のような、道を


君とだったら、歩いて行ける




あの青を越えて






澄み切った青空の下、街の喧騒と人々に揉まれながら、僕達は歩む。



今日のアイテムの買い出し係は、僕とスパーダだ。スパーダと二人っきりで街を歩くのは、そう珍しい事じゃない。

僕の隣にはスパーダがいて、仲間内で今ここにいるのはスパーダと僕しかいなくて、街を歩く人々は誰も僕達の事を知らない。初めて来た街ではないけれど、なんだが二人だけで辿り着いてしまった無人島のような感覚を抱いてしまう。

宿屋に戻れば大切な仲間達がいるけれど、僕は、吸い込まれそうな青空を眺めながら、ああ、それもいいなあ、なんて考えてしまうのだ。


スパーダは僕の友達であり、恋人…なんだけど、僕の思い違いでなければ、今の状況は、ちょっと…いや、かなり、"そう"には見えない。

隣を歩くスパーダを横目で盗み見る。道具屋の帰りだから、手にはお互いアイテムが入った紙袋を抱えている。
僕も持っているけれど、スパーダが持っている袋よりはかなり軽い。
道具屋の人がカウンターで二つの紙袋を差し出してくれた時、スパーダは袋の中身を確認した後、軽い方の袋を突き出して、ぶっきらぼうに「ほらよ」なんて手渡したのだ。……目も合わせずに。
何故だろう…いつものスパーダとはどこか雰囲気がおかしい。僕は頭を捻らせた。

確かに僕は、アスラの力が無ければ力(ここでは腕力かな)の無いヒヨッ子な人間なのかもしれない。けれどアイテムが入った袋ぐらい抱える事は出来る。一体僕をいくつだと思ってるのかな。
スパーダは時々そういう事で僕をからかったりするけど、今回はそういった事を言わなかったし、僕に反論する隙を作らせようとはしてくれなかった。こんなの、初めてじゃないだろうか。

宿屋を出てからずっと黙ってて、顔を強張らせて、どうかしたのかと、さっきから何か話かけようと喉まで言葉が出かかってはいるけど、それは虚しく街のざわめきに消えていくだけだ。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ