戦国夢短編

□冷たき骸に愛を囁く
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もう離さない。やっと手に入れることができた君は…もう、私だけのものだよ。


純白の着物を着て床に眠る君は、とても美しくて。
普段纏め上げている髪は下ろされていて、さらりとした艶やかなそれは布団に散らばっている。



「綺麗だね…里桜」



その髪を一房手に取れば、それはさらさらと私の手を滑り落ちていく。

彼女はなんと美しいのだろうか。以前までは敵同士だったというのに、今となっては彼女は私の傍にいる。
それだけで、私の心は満たされていく。



「ああ。そういえばね、先程官兵衛が訪ねてきたんだ」



雪のように白い彼女の頬を撫でながら、思い出したように話しだす。



「彼ね、可笑しなことを言い出したんだ。『君を返せ』ってさ…変だね?君は私のものだというのに」



まあ、本当を言うと"訪ねてきた"んじゃなくて"捕らえて連れてきた"んだけど。
目で射殺せるのではないかという睨みを私に向けながら、激情の如し怒りを押し殺した顔はとても必死で、彼にしては凄く珍しいものだった。

先の光景を思い出して口角が上がる。



「だから、あのままでは君に危険が及んでしまうから牢に捕らえておいたよ」



その時に腹が立つことを言われたから一発平手打ちを食らわしてしまったけどね。



「大丈夫、命までは奪ったりしないよ。君は優しいから、彼を殺してしまったら悲しんでしまうだろう?」



嘘。本当は今まで君を独占していた彼を殺してしまいたいけど、そうしたらまた君を取られてしまう。だから殺さない。

私も君と同じ所に行きたいけど、でもそれは泰平の世がなってから。



「だから、もう少し待っててくれるかい?」



全てが終わるまでは君の骸を愛するから。



「愛してる…愛してるよ、里桜…」



そして私は、今日も冷たく固い君と唇を重ねて愛を囁く。

――一瞬、彼女の悲しげな声が聞こえた気がして、私は更に笑みを深めた。


――例え周囲の者達から狂っていると…、病んでいると言われても構わない。君が愛おしくて仕方ないのだから。



fin...
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