戦国夢短編
□想ってるだけでは伝わりません
1ページ/2ページ
お前が誰かと居ると、胸が苦しくなる。
これは、いったい何なんだ…。この、気持ちは…?
――まただ、またこの気持ちだ。何だと言うのだ…この苛立ちは……っ。
一人悶々としているのは豊臣のツンデレで有名な将――石田三成である。何故、彼が先程から悶えているのかと言うと……。
「里桜、実は団子が有るのだが一緒にどうだ?」
「わあっ!本当兼続?食べる食べる!」
「では、私がお茶を容れますね」
「幸村の容れるお茶、美味しいんだよねー!」
あの三人、いや、具体的に言えば里桜が原因である。彼女があの二人といると、何故か胸がムカムカするのだ。
…と、本人は心の内でそう呟くが、ただ自分だけがその気持ちの意に気付いていないだけ。
幸村と兼続はもちろん、豊臣軍の九割が知っていたりする。
三成が眉を潜めながら彼らを見ていると……。
「――三成!」
「な、何だっ!?」
と、いきなり里桜に呼び掛けられた三成は、周りにも分かりやすいくらいに肩をびくつかせるように驚いていた。
勿論、兼続や幸村にはモロバレであり、二人は笑いを堪えていた
そんな三成や他二人の様子に気付かない里桜は満面の笑みを浮かべていた。
「三成も、一緒にお団子食べようよ!」
里桜からのお誘い。だが……、
「……俺は甘い物は好かん」
流石は我らのツンデレラ三成、期待は裏切らなかった。
――良い意味では期待を裏切ってほしかったが…。
「(ぁああぁあ…っ!!何故俺は素直に言えぬのだ……!!)」
ツンデレラ三成様、顔には出さないが只今酷く後悔中だったりする。
自分の言いたい事が言えない損な性格に頭を抱えながら、気持ちが沈んでいった。
「…まあ、良いじゃないですか三成殿。お茶ぐらい、一緒に飲みましょうよ?」
そんな三成が可哀相になってきたのか、幸村はすかさずフォローした。
彼は何気に三成の恋を一番応援してたりする。
「(幸村…!礼を言うぞ)……仕方ないな」
さりげない幸村のフォローに感謝しながらそう言うと、先程落ち込んでいた里桜が笑顔になる。
――…三成は気付いていないだろう、彼女はいつも三成を目で追っていることに。
その瞳には特別な感情の色が含まれていることに。
お互いがお互いの気持ちに気付くのか……。
それは、まだ先の話し――。
fin...