三月

□殺戮の町
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サクはオレの方を見て
「ナオ、お前覚えてない?前になんかの雑誌で、『ミステリースポット』って記事読んだじゃん。あそこ行ってみたいんだよな。」
俺は3日くらい前にサクと読んだ雑誌のことを思い出した。
「ああ、あそこな。確かに行ってみたいかもな、ミステリースポット。」
俺が言うとトモとリンは賛成してくれた。
「よし、んじゃあ連休に行こうぜ!」
サクはすごくノリノリだった。


―ブロロロー…

電車、バスに乗って数時間。俺たちはミステリースポットのひとつ、『失踪者の町』にやってきた。
ここは、なぜか訪れた人は皆帰ってきたことがないという、いかにも有りがちな内容の場所だ。

「……随分と霧が濃いな。」
トモが言った。
「こっちの方が雰囲気出てていいじゃん。」
サクは全く気にしていないようだった。
霧の中を歩いてしばらくすると、町らしきものが見えてきた。
「おっ、着いたんじゃねぇ?」
「意外とあっさり来れたやんけ。この何処がミステリーなんかわからんわ。」
リンは不満足気な顔をした。
「アホらし。霧も濃いし、はよ帰るで。」
リンの言葉には誰も反応しなかった。
「…ちょっとだけ覗いてみねぇ?」
サクは興味津々だった。
「はぁ?何言うてんねん!帰れなくなったらどないするつもりや!」
リンの様子が何かおかしい。
「…リン?」
俺がリンの名前を呼んだ時、本人は何処にもいなかった。
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