三月

□花火
4ページ/10ページ

「よいしょっ…とぉ。」
雛森がやって来たのは地区からだいぶ離れた大きな丘のてっぺん。遠いこともあり、周りには誰もいない。
「ふわーっやっぱりこの丘大きいなー!てっぺんまで来るだけで疲れちゃうよ。えへへ。見晴らしはここが一番だからいいけど。」
雛森は芝生の上を走り回ったり、寝転んだりしながら言った。
「懐かしいなー。今思うと、昔はすごく元気だったなー。いや、わんぱくって言った方がいいのかな。毎日のように日番谷く…シロちゃんと一緒に来て、いろんな遊びやって。…でももしかしたら…そんな楽しい毎日を、あたしが壊しちゃったのかな。あたしが死神になりたいって言い出してから、ここへはあんまり来なくなったし…シロちゃんも、口数が減っちゃったし…。お話も、あんまりしてないよね…昔も、今も。今日だって、ホントは日番谷くんと一緒にいたかったはずなのに、なんであたし、こんなところに一人でいるんだろ…」
雛森はだんだんと自分の言っていることに泣けてきた。気付いてみると、自分の目から涙がぼろぼろこぼれているのがわかった。
「今日は日番谷くんの誕生日なのに…あたしが一番お祝いしなきゃいけないはずなのに…あたし…最低だ…日番谷くんがお仕事忙しいのなんていつものことじゃない…あたしだって別にそんなの気にしてなかったじゃないっ……」
雛森は自分の自己中さにハラを立て、そして何もしようとしない自分がイヤだった。
夜空にいくつも咲いている花火の下で、雛森はただ泣いていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ