Novel

□怠惰。◆
2ページ/3ページ

「俺の知らないお前、か…其の言葉、そっくりそのまま返してやるよ」

彼奴の声が耳に入り鼓膜を震わす。何を返すって?

「俺の知ってるお前はそんなモン俺には向けねェぜ…?」

未だに無感情な声で、何かを試すかの様な台詞。そんなモン…嗚呼、刀か…刀?

「俺の事を全部知ってる気になるンじゃねェ…お前はお前、俺は…」

嗚呼、五月蝿いな…俺の知ってる、俺が望んでるお前はそんな事言わねェぜ?

「…っはは」

気が付いたら、何て言い訳をする気は無い。彼奴の鎖骨、白くて柔らかい肌に刀を滑らせて声帯を司る血管を少しだけ切り、着物の真っ黒な帯で後ろ手に縛って頭を布団に押し付ける、そのまま四つん這いになる様に膝立ちさせた所で刀を彼奴の脇腹に 付 き 刺 し た 。

「っぐ…ァ」

痛みを押し殺した彼奴の、感情を含んだ声が初めて聞こえる。いや、今迄にも止めろとか銀時、とか呼んだ気がしたがそんな事知るものか。そのまま刀を押し込んで貫通させ彼奴の細い身体を畳に縫い付け…ようかと思ったが興味本位でアイスを抉る様に刀を半回転。

「ッ、ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛!!」

声帯が半分死んでるのに良く出るな…嗚呼、さっきのは押し殺したんじゃなく出せなかった、なのか。兎に角また彼奴の感情が籠もった声が聞こえた事に嬉しくなった俺は彼奴の傷口に指を入れてみる。湿った、ぐちゃ、という音。再び聞こえる彼奴の声にならない悲鳴。暖かくて、湿っていて、侵入を拒むかの様な弾力。嗚呼…彼奴の身体を思い出した。ふと下を見ると勃ち上がってる息子。

「気持ち良い事、しようか」

優しく微笑んで、彼奴の中に入れた指を抜いて彼奴のナカに舌を這わせた。きゅ、と締まると同時に息を呑む気配。ふっ…と熱い吐息を吐きながら舌を抜き血に濡れた指を少し入れればさっきの感触と寸分違わない感触が指先に伝わる。

「へぇ、脇腹が痛いのにちゃんと感じるんだ…」

どうやら彼奴が言った通り、俺は彼奴の事を何も知らないらしい。そうだ、此からこうやって知っていけば良いんだ。少し嬉しくなって口角を上げる。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ