Novel

□怠惰。◆
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ぼうっとして天井を見上げる。手を伸ばす。…ぱたり、と落とす。眼を閉じる、息を吸う、眼を開けて溜め息と共に胸に溜まった空気を吐き出し、ぼうっとして天井を見上げる。手を伸ばす━━━

「何してンの、晋ちゃん」
机に頬杖を付いて、布団に寝転び一連の動作を飽きる事無く続ける高杉をつまらなそうに見る銀時。あまりのつまらなさに一声かけると、

「呼吸」

と、一声だけ返って来た。

「いやいやいや要らないでしょ、ソレ」

と、丁度腕を伸ばした時に指を指せば酷く怠そうな眼だけを動かして此方を見る。何も言わず何も動かず何も思っていない行動。今迄嫌という程見てきた。因みに時計の針は午後十一時五十分。

「晋ちゃんさァ、いつも夕方と此の時間は無気力になってそういう事するよね」
「…嗚呼」
「何で?」
「時間の邪魔をしたか無ェ…」
「…はい?」

時間の邪魔、とは一体何だろうか。思わず頬杖を外して背筋を伸ばしまじまじと相手の顔を見つめてしまった。

「時間の邪魔?」
「嗚呼」

…分からない。
暫く背筋を伸ばしたままで考え込んでいると、こっちに虚ろな眼を向けて無感情な声で彼奴は言う。

「朝から夜に行く途中は夕方、夜から朝に行く途中は正午」
「…ハァ?だったら昼間とか丑三つ時とかは一体何なんだよ」
「…違う、其れはあくまでも言葉だ。自分の理解し得ないモノを何とか言い表す為の…そうさな、記号」
「記号…?」
「名前と同じだ。隻眼で他人を平気で殺し女の着物を羽織って尚不敵に笑う奴…何て誰も言わねェだろうよ」
「其れは晋ちゃんしか居ないでしょ」
「…さァて、な…?」

上半身を起こして俺を見つめるお前。頭の中が混乱してきた。毎日二回、此奴はこうなる…が、何だか今日は変だ。俺が知ってる晋助、じゃあ、無い。思わず立ち上がって机から離れる

「オイ、晋ちゃ…」

不安に駆られて手を伸ばす、

「ン事言うなんて珍しいじゃねーか、どうした?」

横に立つ、

「まるで俺が知らないお前みてェだぜ?」

しゃがんで彼奴を抱き寄せる、
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