Novel
□3-Z・授業
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「んじゃー、2キロマラソンなー。」
青空に響く、体育教師の声。
面倒でさァ・・・ま、仕方ねェ。
総悟は、靴紐を結びながら溜息を付いた。
「・・・あ」
その表情が、一瞬にして嬉しそうな顔に変わる。
見つけましたぜィ、土方さん。3ヶ月前、アンタがおかしくなってから・・・俺ァいつの間にかアンタを目で追っちまってる。最初はそんなハズねェって否定してたんだ。けど・・・
「お前等ー、位置に付けー。」
ピストルを構える体育教師。
今じゃ、もう気付いちまった。アンタはただのクラスメイトから、俺の―――
「チッ・・・ンでテメーと隣なんだよ」
隣から、ダルそうな土方の声が耳に入って来た。
「おや、土方さんですかィ。びっくりしやしたぜ。」
「嘘付けコノヤロー。テメェ棒読みじゃねェか。」
「ンな事無いでさァ。」
・・・かなりビビりやしたぜ、土方さん。冷や汗モンでさァ・・・考え事してる時、しかもよりによってアンタの事考えてる時に話しかけてくんじゃねェや。
「パンッ」
ピストルの、乾いた音が鳴り響く。
負けねェ、土方さん。俺ァアンタに全て勝ったら・・・この、想いを―――
「オイ相互、テメェ、何で俺の前ばっかり走りやがる・・・?」
苛つく土方の声が背後から聞こえる。
「何言ってんですかィ、これは人間の格の違いでさァ。」
「テメェ・・・」
スピードを上げたのか、さっきより声が近くなった。
無駄ですぜ、土方さん。何故かは知らねェが、アンタは最近フラフラだ。
何日も寝てねェ様なヒドイ面してますぜィ。第一、アンタは負けず嫌いだが自分の身体無視してそんな無茶する人じゃなかった。全ては、3ヶ月前から・・・
「っは、はっ・・・」
息切れが聞こえてきた。
「フラフラじゃねェですかィ。休んだらどうです?」
「ざけ、んなッ・・・!」
あーあ、無理して。倒れても知りませんぜ。・・・まあそうなっても大丈夫な様にさっきから合わせて走ってんですがね。一体、3ヶ月前アンタに一体何が―――
「っ総・・・!」
急に、切羽詰まった声が聞こえた。