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□強がり。
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とある晴れた空の下、銀魂高校の二時間目。
「はっ…はぁ…」
背中に当たる冷たい石の感触が心地良い。ドクドクと心臓の鼓動が身体中に響いて世界には自分しか居ない様に感じる。
微かに冷たい腕を額に押し当てて目を閉じれば頭上からダルそうな声が聞こえてきた。
「朝からエロいね高杉くんは」
「…朝から何やってんスか先生」
うっすらと目を開ければ其処には眩しい程の銀髪。キラキラと日の光が反射して…
「何、俺の髪そんな好き?」
思わず、手を伸ばしていた。
「違っ…!!」
手を引っ込めようとしたら、意外に強い力で掴まれた。手がひんやりしていて気持ち良い。
「先生は素直な子が好きなんだけど?」
「誰がクソ教師なんかに素直になるか」
「…」
ぎゅ。
「…は?」
抱き締められた。
「オイ、先生っ…」
「晋助、走るの早くなったろ」
耳元で静かに、囁く。走るの早く、って何で知って…え、晋、助…?
「俺さー、職員室からずっと見てたんだよ。お前の事。いや…お前だけ?」
そう言ってへらっと笑う。
「だからさー」
何も言えない俺に、銀色のソイツは続ける。
「先生、お前の事好きなんだわ。だから…」
「晋助って、呼べよ」
「…え?」
少し身体を離し顔をまじまじと見つめられた。俺はしっかり眼を見つめて、言う。此の時が夢じゃありませんように。銀色のコイツが逃げませんように。
「さっきみたいに晋助って、呼べよ。…銀時」
「…晋…っ」
がばぁ、と。強く強く…でも優しく。
「馬鹿、苦しいだろ」
「だって俺めっちゃ嬉しい…ああヤベェ晋ちゃん大好き!!」
「頬擦りするな!!晋ちゃんじゃねェ、晋助だ!!」
「パフェよりも、好き」
いきなり真面目な声で言われると、何も言えなくなる。大人ってやっぱ、卑怯だ。
キーンコーン…
青空の下、チャイムが響いた。
「あ、悪い…ずっと抱き締めてた」
「…もう少し」
「…え?」
「だから、もう少し…走ったから暑くて、お前冷たくて気持ち良い、から」
「…ぷっ」
ハイハイ、と笑ってとっくに熱の冷めた俺の身体を優しく抱き締めてくれた。
「晋ちゃ…晋助、冷たくね?」
「…馬鹿、熱いだろ」
「何処が?」
此処が、と言って俺は心臓を親指で指差した。少しだけ格好付けて。
「嗚呼、確かに顔赤いね」
「何処見てんだよ!!」
青空の下、二人。
幸せそうに、二人でほぼ同時に笑いあった。