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□キミの残り香味
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『10代目』

ベッドの中。
キミの髪に指を絡めて毛先で遊ぶ。

『なに?』
『…あの、…。
…なんでもない、です』


…なんでもないって言ったじゃん。
嘘つきは嫌いだよ。





「一週間だけ、イタリアに帰ります」

キミのその言葉にカチンときた。
何にムカついたかと言われれば、ポイントが多すぎてどこに重点を置いて怒ればいいのかわからない。
とりあえず端から問いただす。

「帰るって何」
「色々と調達しにです」
「キミの帰る場所はソコなんだ」
「いえ、行ってきます、ですね」
「別にいいけど。何でもっと早く言わなかったの?」
「申し訳ありません、言い出しづらくて」
「こないだ俺の部屋で言いかけた事ってコレ?」
「…はい。申し訳ありません」
「なんであの時言わなかったの?」
「申し訳ありません、あの、…」
「何、ハッキリ言って」
「勝手なんですが、あの時俺…」
「だから何」
「その…すげー幸せで」
「…」
「とても言えなくて…」


泣きそうなのか笑ってるのかわからない、キミの表情からは切なさと少しの熱が伝わった。

「…今日、ウチおいで」

あんな会話の後の常套句。
しばらく会えなくなる前にヤらせて、って意味に捉らえられてもしかたない。
てゆーかそれで一向に構わない。
何にせよキミが拒否するはずないから余計な事は言わない。
キミに用意された答えは一つしかないんだから。

「はい。今日伺います」



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