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□楽しい25日風味
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俺は今とても追い詰められている。文字通り自室の隅へ。

数十分前までは良かった。

7時過ぎ、俺の部屋に来て下さった10代目から、
『キミの部屋にも置けそうだなって思って』
と、テーブルに置けるサイズのツリーを戴いてしまった。
シンプルで綺麗な飾りが付いていて、無機質な俺の部屋もそれらしくなった。
『毎年1コづつ飾りを増やしていこっか』
俺には勿体ない言葉まで頂戴してしまい、泣き崩れそうになった。
年中飾っておきます!と言ったら『お嫁にいけなくなるよ』と言われた。それは雛人形です。しかも俺男の子です。
笑う貴方に、貴方が拒まない限り俺はどこにも行きませんよ、と咄嗟に真顔で言ってしまった。差し出がましい口をきいたと思い訂正するべきか考えていたら、貴方が真顔で『うん』と言ったのでまた泣きそうになった。

ケーキを開けた所までは良かった。

出来立ての柔らか過ぎるスポンジと生クリームに苦戦しながら不器用にフォークを口に運ぶ貴方が可愛過ぎて、思わず緩む口元を慌てて手で隠す。
コレを見立ててくれた昼間の店員に少し感謝した。

シャンパンの辺りからがマズかった。

かなり飲みやすいシャンパンで『これ美味いね』と貴方からお褒めの言葉を与り、気合い入れて良かった…なんて調子に乗っていた所に落とし穴が潜んでいた。
早いペースで空く貴方のグラスに注いだ液体が元凶なのは間違いない。

子供の頃サンタに手紙を書いた事があるとか、何歳まで信じてたとか、他愛のない話をしていた時だ。
生まれて初めての幸せなクリスマスに、少し…ってゆうかかなり浮かれていた俺の肩に急に10代目がもたれてきた。
紅潮した顔と潤んだ瞳で『酔っちゃったかも…』と言われ、ヤバイ可愛い!などと無礼な思いが頭をよぎるのを払いのけ、俺水持ってきますねと言って寄り掛かる貴方の体をそっと離した時だった。

10代目の肩に置いた俺の両手が急に強く引っ張られたので膝立ちになっていた俺は体勢を崩して再び座り込んでしまった。
気分が優れないのだろうか。下を向いたままの10代目の顔を覗き込む。
『あの、水…』
『いらないからここにいて』
頬の赤みが消え目が据わった10代目と視線がぶつかる。
思わず後退るがここは狭い部屋の中、簡単には逃げられない…



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