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□三日月味
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土曜の夜。

煙草と火薬のニオイを消すため、と言い訳して香りを纏う。

これは貴方が好きな香り。

『今夜ウチに泊まりにおいで』

「泊まる」っていうのは、今までの経験上、多分(絶対)……そうゆうコト。

持ち物を色々考えたけど、どうせ何も必要ない。

結局、煙草と財布だけ持って部屋を出た。

今夜は三日月。






「いらっしゃい」

迎え入れてくれた10代目の大きな瞳は、
まるでなにもかも見透かすようで軽くたじろぐ。

でも今日は覚悟決めてきたから。
俺も目を逸らさない。

「おじゃまします」

「あがって?」

いつも通りの会話。
10代目の後について部屋に入る。



部屋に入るなり大きな音でドアが閉まり、急にベッドに乱暴に押し倒される。

覚悟して来たって言っても、さすがにビックリした。
…イキナリもう、ですか。

「ごめん、乱暴にして」

「いえ…謝らないでください…」

「ずっとね、こうしたかったんだ、キミは?」

「…俺も、です」

なんだか貴方も俺も、会話に余裕が無い。

「もうね、我慢できないよ」

抱き竦められ、耳元で囁かれる。
顔が熱くなるのがわかった。
でも今日は俺も、

「そのつもりで来ました」

…言ってて恥ずかしくなった。
急に身体を離して俺の顔を覗き込む貴方。
あんまり見ないで下さい。

「知ってたよ?」

…やっぱり。


楽しそうに俺の服を剥いでいくあなたに抵抗する手段はない。


カーテンの隙間から三日月が見える。

今日は土曜日。



もう、
あなたの指に声に、
溺れるだけ。





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