ダイヤモンド
□夏空
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「・・・はあ。 ねえ、叶。 あんた今、最高にカッコ悪い。」
「! 何だと。 どういう意味だよ。 いくら瑠里、お前でも許さねーぞ。」
言い終えたと同時に素早く起き上がり、怒りの為か薄っすらと上気した顔と、突き刺すような鋭い視線がこちらに向けられていた。
暗く、そのくせ燃えさかる激しい炎の様な光を湛えたその瞳に見据えられ、竦みそうになる。
何も知らなければ、間違いなくその場から立ち去っていただろう。
そうしたいのを、ぐっと堪えて続ける。
「そ、そんな凄んだって、怖くないわよ。 思ったとおりの事を言ったまでよ。 それであんたに殴られたって、構わないわ。 ほら、殴りたければ、殴れば?」
わざと、頬を突き出して見せた。
彼は、むっとした表情をして、起こした身体を戻して背を向けてしまった。
「っち。 お前、うぜーんだよ。 早く、どっか行けよ!」
「・・・行けないよ。 探しに来たんだもの。」
「誰も探してくれなんて、頼んでねーだろ!」
「そうだけど・・・。 ねえ、いつまで、ここに居るの? 帰らない、の?」
「・・・お前に、関係無いだろ。」
頑なまでの彼の態度に、心を決めた。
彼のその、全てを拒んでいる背中に語りかけた。
「・・・確かにそうかもね。 でも、幼馴染として、あえて言わせて貰うわ。 ねえ、叶。 あたし、まどろっこしいのは苦手だから、そのまんま言うけど、本当は、自分でも分かってるんでしょ。 何をすべきなのかは。 今、自分が何処に居るべきなのかも。 ・・・分かっているなら、そこへ行くべきなんじゃない? だって、野球って、チームで戦うものでしょう?」
ぴくりと、彼の背中が動いた。
「・・・うるせーな。 そうだよ! そんな事、お前に言われなくたって分かってるよ! 今の俺は、・・・ただ、逃げてるだけだって!」
こちらに向けられたままの彼の背中は、僅かに震えているように見えた。
吐き出すようなその言葉に、彼の心の葛藤を垣間見た気がした。
「っ。 ・・・そっか。 そうだよね。 叶が、分かってないはずないもんね。 なら、いいんだ。 安心した。 ごめんね、分かったような事言って。 ・・・それじゃ、行くね。」
「え・・・? 何だよ、それ。 って、おい。」
こうも簡単に引き下がるとは思っていなかったのだろう、慌てた様子で、彼が起き上がって言った。
ここぞとばかりに、何時も通りに振舞ってみる。
「何? ここに居て欲しいって事?」
「なっ!? な、何でそうなるんだよ。 別にそんなんじゃねぇよ・・・」