ナナイロ

□六花 −偶然のプレゼント−
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天気も悪く、それに加え、とても寒かったのもあって、ついつい、もう少し、と出掛けるのを先延ばしにしていたら、いつの間にか、雨が降り出していた。

小雨ではあったけれど、もう既に、出掛ける事自体、億劫だと思っていたので、とても出て行く気にはなれなかった。

天気予報でも、雨とは言ってなかったので、そのうち止むだろうと思い、そのまま、様子を見ていた。


予想通り、雨は止んだものの、辺りはすっかり、暗くなっていた。

時間的にも、何時もならもう、夕食を食べている時間になっていたので、仕方なく、家を出て来たのだった。



近くのコンビニで、簡単に済ますつもりだった。

でも、いざ店の前に来てみると、店内は、カップルやスーツを着た、いかにも一人暮らしだろうと思える人達ばかりで、ふと、こんな日に、一人分の食事を買う事が、なんだか急に、恥ずかしく思えて、その店内に、入る事は出来なかった。

少しの間、行き先を迷ったけれど、スーパーマーケットに行く事にした。


つい最近、開店したばかりのその店は、歩いて行くのには、近いとは言えない距離ではあったけれど、店内の雰囲気や、品揃えが豊富で、とても気に入っていた。


「あーあ。 自転車で来れば良かった・・・」


予定に無い、寒い夜道を一人で歩きながら、後悔ばかりが頭を過ぎる。 

そんな、沈みがちな気分を、徐々に華やかになっていく、イルミネーションの明かりが、唯一慰めてくれていた。


眩しいくらいに、明るい店内に入ってみると、時間の割には、そこは意外なほど人が多く、賑やかだった。

それまでと対照的な、明るい雰囲気に、一気に気分も良くなって、歩きで来ていた事も忘れて、必要の無い物まで買い込んでいた。


楽しくなった気分も、店の外に出た途端、その外気の冷たさに、一気に冷めて、我に代える。

「あ。 そっか、歩き、だったんだ・・・」


それまで感じていた以上に、荷物が、重さを増したように思えた。

少しの間、呆然としていたけれど、何時までもそこに居る訳にもいかず、居たとしても迎えが来る訳でもなく、渋々、その腕に掛かる、重さを後悔しながら歩き始めた。
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