ナナイロ

□虹 〜君へ届いたなら〜
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(うわっ、誰か来る! こんな格好なのに〜)

慌てて横を向き、横目で盗み見ると、髪の先から滴を垂らしていたのは、よく知る人物だった。

「はひ! や、山本さん!?」
あまりにも馴染み深い人物に、先程までの居心地の悪さは、すっかり吹き飛んでいた。

「うん? おっ、ハルじゃん。 オッス。 何? お前も部活?」
「あ、はい。 天気予報で何も言ってなかったから、傘持ってこなくてずぶ濡れですよ。」
「ははっ。 そっか。 ま、俺は天気予報なんて見ないから、どっちにしても同じだけどな。」

ずぶ濡れのまま、いつものように笑っているのが彼らしかった。
「天気予報くらいは見た方がいいですよ。 あの、タオル使っちゃったので良ければ、拭いて下さい。 水滴ってますよ。」
「お。 悪ィ。 タオル借りるわ。 俺の、雨降る前からもう、ビショビショでさー。」

サンキューと言いながら、タオルを受け取ると頭をわしゃわしゃと拭き出した。
その仕草が小さい子供のようで、思わず微笑んでいた。

突然、辺りが真っ白になったかと思ったが早いか、信じられないほどの轟音が轟いた。
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