青葉
□不可解な感情の名前
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どうかしている。
そう、そうとしか思えない。
きっと、これは何かの間違いで・・・
わたしに限って、こんな事があるはず無い。
長い廊下を歩きながら、モヤモヤした気分を納得させようとしていた。
「何か良い事でもあったんですか?」
始まりは、侍女のそんな一言からだった。
「え?」
「だって、テマリ様ったら、今日は朝だというのに、ずっとご機嫌じゃないですか。」
「え!? 私が、ご、ご機嫌!? そんな訳、無いだろ。 いたって、いつも通りだ。」
「そうですか? まあ、テマリ様がそう仰るならそうなんでしょうね。」
「なっ、・・・」
「それでは、失礼致します。」
にこやかに笑いながら退室していく彼女に、何時ものように言葉が出ないでいる自分に“いつも通り”では無い事をわずかに自覚する。
私、何時もと違ってる?
目の前の鏡に、それまで見た事も無い表情をした自分が映っている事には気付いていなかった。
きっと、朝のアレは、彼女の見間違えだ。
廊下を早足で歩きながら考えていた。
だって、何時も通りじゃなくなる理由が無いじゃないか。
そう、きっと何かの間違いだ。
そう、結論付けた時、後ろから声を掛けられた。