ダイヤモンド
□カラメル
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子供の頃、憧れた夢の舞台、甲子園。
そこを、無邪気に目指していた時期もあった。
いつの頃からか、肘に痛みを感じるようになった。
他の人に知られたら、マウンドから降ろされてしまいそうで、怖くて誰にも言えなかった。
周りが気が付いた時には、痛みで肘が伸びなくなっていた。
色々、あった。
そして、野球を諦めた。
子供の頃の、夢を諦めた。
夢が叶う奴の方が珍しいんだと、自分に言い聞かせて。
諦めたはず、だった。
三橋に会うまでは。
でも、三橋に出会って、夢を見ていた頃を思い出してしまった。
野球が楽しくて、楽しくて仕方なかった、あの頃を。
そして、思い知った。
自分がどれ程、野球が好きなのかを。
今でも、これ程胸がざわめく事を。
三橋や泉達のいる、向こう側には行けないけれど、フェンスのこちら側で、死ぬほど応援しよう。
少しでも、奴らの力になれる様に。
今の俺に出来る事は、してやれる事は、こんな事でしかないけれど。
さぁ、今日もアイツ等を信じて、奴らに届く様に、全力で応援しよう。
「せーのお!」
俺らの熱い夏は、まだ終わらない。
〈Fin〉