ダイヤモンド

□継がれゆく想い
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「お、こんな所にいたか。 なーにやってんだ。」

「えっ! 和さん!? 何で、ここに!?」

練習に出る気にならず、ランニングでよく通る土手に座り込んでいた。

「何でじゃねえだろ。 エースがヤル気にならなくて困ってるって、利央に泣き付かれたぞ。」

「うっ、利央の奴〜。 よりによって、和さんにチクるなんて。」

「まー、利央なりにお前の事、心配してるんだから、大目に見てやれよ。 それにしても、どうした? 準太。 …まだ、抜けらんねぇのか?」

「! …はい。」

「俺としては、そこまで思って貰えて光栄だけどな。 でも、もういいぞ。 もう、十分だ。 自分を許してやれよ。」

「か、和さん…。 でも、俺は…。」

「確かに、俺達3年の夏が、こんなに早く終わるとは、誰も思って無かったよ。」

「!」

「でもな、これが現実なんだよ。 そして、野球の、夏大の怖さでもある。 勝つチームがあれば、それだけ、負けるチームもある。 そういう事なんだ。 俺達3年は一番、その怖さを知ってた筈だったんだがな…。」

「和さん! 俺は、和さんがいたから、エースになれたのに、それなのに、和さんに何も、何も返せないまま…、返すどころか、俺が抑えられなかったばっかりに…、夏が、和さん達の夏が…、こ、こんなにも…早く、終わって…ううっ。 お、俺は…」

「準太。 俺は、お前と最後の一年間、バッテリーを組めて本当に良かったと思ってる。 お前は、最後まで俺を信じて投げてくれた。 お前が抑えられなかったんじゃない。 俺のリードが甘かったんだ。 お前を、ちゃんと投げさせてやれなかった。 俺の方こそ、ごめんな。 …確かに、全てを割り切ったと言えば嘘になる。 この間の西浦の試合で、捕手を見た時、正直、嫉妬した。 あの場所にいる捕手が羨ましかった。 でも、それは試合だから仕方ない事なんだ。 …なあ、準太。 俺は、こんな残酷な結果になったとしても、野球が好きなんだよ。」

「グスっ、…和さん?」

「その、好きな野球を、高校最後の夏を、…準太、お前と終われたその事は、いっこも後悔してないぞ。 本当に、お前は、いい投手だよ。 俺にとって、最高の投手だよ。」
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