ダイヤモンド

□気になるの!?
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携帯と対峙して、はや一時間。
文章を打ち込んでは、クリアの繰り返し。

「はぁ〜。 もー、何やってるんだろ、あたし。」
ベッドに倒れ込み、思わず溜息をつく。

恨めしい気分で、机の上に置いてある薄いブルーの封筒に目をやる。
元を糺せば、あの封筒がこのスッキリしない状況を作り出した元凶であった。



「ねぇ、三橋さん。」
授業も終わり、部活に行く準備をしていた所に、同じクラスの子が声を掛けてきた。

「うん? 何?」
「これから、部活? あのさ、悪いんだけど、ちょっとだけ時間良いかな?」
時計を見て済まなさそうに、両手を胸の前で合わせている。

「え? あぁ、まあ、少しくらいなら。 で、何?」
「忙しいとこ、ごめんね。 じゃ、早速ちょっと一緒に来て欲しいんだけど。」
「う、うん。 分かった。」

一体、何が始まるのかと、少し緊張しながらも後を付いて行った。
行き着いた先は、ほとんど人の通らない非常階段に続く踊り場だった。

そして、其処には女の子が1人待っていた。
(あれ? あの子って、隣のクラスの子、だよね。 うん?)
訳が解らなくなっている所に、話を切り出された。

「あのさ、三橋さんって、野球部の叶君と家近いんだよね?」
「は? 叶?」
(なんで、叶の名前が出てくるの? …はっ! もしかして…)

自分が呼ばれた意味と、これからの話の内容が大体予想出来て、早くもこの場から立ち去りたい気分になっていた。

予想は、儚い期待を呆気なく裏切り、適中していた。
隣のクラスの子が、―どこでそうなったかは話てはくれなかったが―とにかく、叶を好きになってしまい、どうしても気持ちを伝えたいから、と手紙を渡して欲しいと頼まれた。
正直、気は進まなかったが、真剣な彼女の申し出を、明確に断る理由も見つけられず、仕方無く引き受けたのだった。



「あー。 明日でいい…、わけ無いよねー。 はぁ〜。」
真剣な表情の彼女を思い出し、投げ出したい気持ちを引き留める。
(あーもう! こうなったら、さっさと済まそう! 叶に連絡取って、手紙を渡せばいいだけなんだから!)
「よし!」
新たに気合いを入れ直し、携帯を手に取った。
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