ナナイロ
□六花 −偶然のプレゼント−
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「はあー、寒っ。」
吐き出す息が、白く視界を霞ませる。
何だってこんな日に、両親が旅行になんて行ってるんだろう。
くじ引きで当たったからって、私だけ残して行くなんて。
街中、クリスマスのイルミネーションで、キラキラと輝いている。
その輝きが、一人だという寂しさを一層、際立たせていた。
昨日のイヴは、皆でパーティをした所為もあって、今日は余計に、寂しく感じてしまう。
「はあーあ。 面倒くさがらずに、昼間に買い物に来れば良かった。」
歩く度に、カサカサと音を立てる、ずっしりと重いビニール袋を持ち直す。
そして、星一つ見えない空を見上げた。
一昨日から、冬休みという事もあり、更に昨日の影響で、つい寝過ごしてしまい、目が覚めたのは、お昼近かった。
着替えを済まし、下に下りると、丁度、両親が出かける所だった。
天気は生憎、どんよりと重たい雲が太陽を遮っていたが、そんなことは、ちっとも気にしていないようで、それは嬉しそうに出掛けて行った。
物音一つしない家の中で、改めて一人なんだと感じた。
言われた通り、キッチンのテーブルの上には、一万円とメモが置かれていた。
そのメモには、冷蔵庫の中には食料らしいものは入っていない、という事が書かれていた。
げんなりした気持ちで、冷蔵庫の扉を開けると、確かにそこには、調味料と飲み物くらいしか入ってなく、がらんとした空間が広がっていた。
「うわ。 本当に何にも無い。 これじゃ、どっちにしても買いに行くしかないなぁ。」
あの時に、出掛けてしまえば良かった。
そうすれば、今頃は、暖かい家の中で、テレビでも見ていられたのに。
寒さで、耳と鼻が痛い。
(ああ、きっと、鼻真っ赤になってるんだろうな。 恥ずかしい。)
口元のマフラーを引き上げる。
自業自得だと解っていたけれど、少しだけ、悲しい気分になっていた。