ナナイロ
□虹 〜君へ届いたなら〜
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さっきまでの、この時間にしてはまだ強い日差しは、あっという間に真っ黒な雲に遮られ、雷鳴が鳴り出していた。
「嫌だなぁ。 雷鳴ってるし。 家までもってくれないかなぁ。」
今にも降り出しそうな空を見上げて、持っていたスポーツバックを抱えて走る。
土手沿いのこの道は、いつもなら散歩をする人や、帰宅途中の学生達がいるのだが、さすがに夏休みのまっただなか、しかもこの空模様とあって、誰の姿も無かった。
ポツリ、頬に雨粒があたる。
その一粒が合図だったかのように、降り出した雨はみるみる雨脚を強め、視界が霞むほどになっていた。
「きゃー、やっぱ、降って来ちゃった。 雨、痛っ。」
すぐ近くには、雨宿りが出来るような建物は無い。
とりあえず、橋の下に避難する事にした。
橋の下に入り、雨を凌ぐ事は出来たが、既に全身ずぶ濡れになっていた。
「ひゃー、ビショビショだぁ。 早くやんでくれないかな。」空を見上げながら、持っていたタオルで髪を拭く。 濡れて肌に貼り付くブラウスが気持ち悪い。
(早く帰って、お風呂に入りたいなー。)
雨音で気が付かなかったが、すぐ近くで走ってくる足音がした。
ギョッとしてそちらを見ると、自分と同じようにずぶ濡れになってこちらに向かって来る男子がいた。