ナナイロ

□笑顔
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あなたのことが、すきでした。
ずっと。

そして、これからも。



医師から、余命を聞かされた。
もう、そんなに生きられないと。
恐怖や不安、怒りや悲しみ、色々な感情に呑み込まれ、散々苦しんで最後に残ったもの。
それは、たった一つ。

―あなたに、会いたい―

会ってどうなるものでも無いのだけれど、このまま、何もしないでただ、大人しく全てを諦めて逝く事だけは絶対に嫌だった。
いつ自分の命が潰えてしまうかも分からない。
そんな、不確かな状態だったけれど、それでも、その衝動を抑える事は出来なかった。



ふと、気付くとそこは見知らぬ部屋にあるベッドの上だった。
辺りを見回しても、自分がいるこのベッドと、こじんまりしたデスクと椅子の他には何も無い部屋。
それでも、部屋の隅々までがアンティークな雰囲気を醸し出しており、ここが其なりの時間を経ている事が窺えた。

目覚めてから、どのくらい経ったのだろう。
とても長い時間のようにも、ほんの数分のようにも思えた。
時間の感覚が分からなくなるほど、この部屋は静寂に満ちていた。

そんな事を、いつまで経ってもはっきりしない頭で考えていたら、いつの間に現れたのか、扉の向こうに人の気配がした。
その重厚な扉は音もなく開き、そこには良く知る女性が立っていた。

彼女が、ここに至るまでの経緯を話してくれた。
思っていた以上に衰弱していた身体には、長時間のフライトは負荷が大きかったようで、到着直後に倒れ、そのまま意識を失ってしまったとの事だった。
わたしの残された時間があと僅かな事を知っていた彼女が、病院ではなく、ここに運んでくれたのだった。

ようやく、今いる場所が何処なのか分かった。

彼女の更なる言葉に身体が震えた。

モウスグ、彼ガココニクルワ。 モウスグ、ダカラ…。



時々、遠退きそうになる意識を手放さないよう、祈るような思いで扉を開くのを待った。
―どうか、もう少しだけこちらにいられますように…―
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