青葉

□不可解な感情の名前
3ページ/5ページ



「あっ、テマリ様! お部屋に姿が見えないので、探しましたぞ。」

「ああ、すまない。 今から部屋に戻る。」

「それでは、急がれた方が。 もう、木の葉の方達との約束の時間になってしまいます。」

「そうか、分かった。 ・・・手間を掛けさせてしまって、済まなかったな。」

「は? い、いえ、手間など、それほどの事ではございません。」

「私は一旦、部屋に戻ってから向かう事にする。 準備の方を頼んだぞ。」

「は、はい。」


呆然とした表情のまま、動こうとしないその者をその場に残し、早足で自室へと向かう。

心の隅に引っかかる、ある言葉に気付かない振りをしたまま。



部屋で簡単に支度を済ませ、目的の部屋の前まで来ていた。

目の前には、見慣れた扉。

そして、その向こうには−


胸の中心に再び、熱が生まれるのを感じた。

軽く頭を振って、浮かんでこようとする考えを振り解く。


何を考えているのだ。

先ほど自分の立場を確認したばかりではないか。


浮き足だそうとする気持ちと、それを抑えこもうとする理性。

生まれた熱が、引き戻され冷めていく悲しみ。


! 悲しい? 私は、悲しいのか?


気付いた気持ちに、思わず一人ごちる。


「・・・はは。 私とした事が、こんな気分になるなんてな。 ・・・。」


俯きかけていた顔を上げ、目の前の扉を見つめる。

一呼吸して、扉を開けた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ