青葉
□不可解な感情の名前
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「あっ、テマリ様! お部屋に姿が見えないので、探しましたぞ。」
「ああ、すまない。 今から部屋に戻る。」
「それでは、急がれた方が。 もう、木の葉の方達との約束の時間になってしまいます。」
「そうか、分かった。 ・・・手間を掛けさせてしまって、済まなかったな。」
「は? い、いえ、手間など、それほどの事ではございません。」
「私は一旦、部屋に戻ってから向かう事にする。 準備の方を頼んだぞ。」
「は、はい。」
呆然とした表情のまま、動こうとしないその者をその場に残し、早足で自室へと向かう。
心の隅に引っかかる、ある言葉に気付かない振りをしたまま。
部屋で簡単に支度を済ませ、目的の部屋の前まで来ていた。
目の前には、見慣れた扉。
そして、その向こうには−
胸の中心に再び、熱が生まれるのを感じた。
軽く頭を振って、浮かんでこようとする考えを振り解く。
何を考えているのだ。
先ほど自分の立場を確認したばかりではないか。
浮き足だそうとする気持ちと、それを抑えこもうとする理性。
生まれた熱が、引き戻され冷めていく悲しみ。
! 悲しい? 私は、悲しいのか?
気付いた気持ちに、思わず一人ごちる。
「・・・はは。 私とした事が、こんな気分になるなんてな。 ・・・。」
俯きかけていた顔を上げ、目の前の扉を見つめる。
一呼吸して、扉を開けた。