青葉
□熱風
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里を出て、三日目。
それまでの見渡す限り、砂と空だけの景色に変化が現れた。
そびえ立つ様な砂丘を越えて目にしたのは、今までの景色からは想像するのが難しいほどの巨大な岩山だった。
(ふー、やっと見えたな。 あの向こうか。 もう少しだな。)
中忍になって、はや五年以上の月日が経っていた。
それなりに、実践の経験も積んだ。
肉体派では無いことは自覚しているが、中忍としてのそれなりの体力は有るつもりだ。
それでも、粒子の細かい乾燥した砂という足場の悪さと、容赦なく照りつける、焼け付くような陽射しの中を二日間歩き続けた身体は、当たり前のように休息と水分を欲していた。
(・・・しかし、何度経験しても、お世辞にも楽とは言えねえな。 こんなの、当たり前の環境で育ったんだよな。 基礎が違うか・・・。 アイツ、強ぇー訳だよな。)
ふと、ここ暫く、顔を会わせていない人の顔が浮かんだ。
そして、僅かに口元がほころんでいる自分に気が付いた。
岩山には近づかなければ、分からないほどの隙間がその奥へと続いていた。
大人一人がやっと、通れるほどの細い空間が、剥ぎ取られたようにそこにあった。
圧迫感を感じずには居られない、その細い空間を抜けた先に一人の人物が待っていた。
予想と違うその人物は、人懐こい微笑で迎えてくれた。
今年から、中忍試験の担当になったというその人物は、ナナイと名乗った。
見た目は、童顔のせいでかなり年下に見えたが、実年齢は自分と大して変わらないという事だった。
あの木の葉崩し以来、一時は色々あったが、その後木の葉の里と砂隠れの里は、その同盟関係をより強めていた。
さまざまな交流が行われ、その成果とでも言おうか、今まで木の葉の里で行うのが常とされていた、中忍試験が今年初めて、砂隠れの里で開かれる事となった。
その準備や、進行の確認をチェックする為に、中忍になってから、−自分の意思とは無関係にではあったが− ずっと中忍試験の担当をしていた自分が、この砂隠れの里に派遣されたのだ。