□添寝
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「この世には不思議なことなんてないんだよ、関口君」


馬鹿にした様にほくそ笑み(本当に馬鹿にしてるんだが)君はよく僕にそういって僕の中の絡まった糸をほどいてくれた




だけど、此の状態は…不思議以外の何物であろう



たいした理由などなかった
眩暈坂を登り、京極の家へ次の小説のヒントを求めてやってきたら榎さんが大の字で寝ていて、木場の旦那が干菓子を食べていて、古本屋の主人が煙草をふかしていたのだ

そんな理由。

寝ている榎さんを除いて三人で他愛の無い話
…もっとも京極の独壇場だが
をしながら茶をすすっていると突然その榎さんが飛び起きて私を発見するなり
「おぉ!猿だ!猿君がいるぞ!」
と奇声を発しながらこづいていた。
小突き飽きると何かを嗅ぎ付けた犬の様に辺りを見回し、すたすたと茶の間をあとにした
家主は特に気にすることも無くまた家主の独壇場がはじまる


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