shyz


□世界に衝撃をあたえるshyz
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フィギュア界に衝撃が走った。
度々メディアで私生活がミステリアスと称される羽生結弦がSNSをはじめたのだ。
新型コロナウイルスの影響により様々なイベントが中止になり、日常生活でも外出自粛が続き、暗い雰囲気が漂う中でフィギュアスケート界を盛り上げていこうと羽生のスポンサーであるKOSEが主催をし、期間限定で羽生結弦の公式インスタグラムアカウントを開設したのだった。以前も雪◯精のアンバサダーとして期間限定のブログ更新をしていた時もあったが、今回の公式インスタグラムでの投稿は、私生活が謎に包まれている羽生結弦の日常が垣間見え、投稿されていく度にファンは大興奮していた。
投稿内容は雪◯精の宣伝はもちろん、おすすめのイヤホンの紹介やゲームをしている様子など、家での過ごし方を自撮りしファンを熱狂させた。

何よりファンの心を熱くさせたのが他のスケーターとのコラボライブ配信だ。選手やプロスケーターたちとスケートについて語る場面では選手同士が試合でどう思っているのかなどが知れたり、結弦の素の喋り方や色んな表情を見せるその姿はファンにとっては新鮮で最高の時間なのだ。初回は結弦の憧れであるプルシェンコをゲストに迎え、本人を前に緊張しながらもプルシェンコに怒涛の質問をする結弦を見て、世界中のファンも微笑ましく見守った。そして先日は結弦の唯一のライバルであり、友でもあるハビエル・フェルナンデスとのライブ配信がされた。配信は2時間程度。コメントからの質問に答えたり、2人が切磋琢磨した6年間のエピソードが語られ、結弦が涙する姿もあった。そしてハビエルの愛猫であるエフィが登場すると結弦はデレデレになり「エフィちゃん」と連呼し、そのふにゃふにゃした甘い顔はすぐにネットニュースのトップをかざった。#Yuzuvierというワードは何時間も世界のトレンドに残っていた。

そして本日、結弦とライブ配信でコラボするのはナム・ニューエンである。数年間同じチームで練習してきた2人は今でも試合で会う度に、結弦はナムを弟のように可愛がり、時にはいじり倒すほど仲が良い。

「あ!繋がったみたい!みんなこんにちは!」
画面に写ったのは元気よく笑顔で挨拶するナムと、普段のサラサラな黒髪を、今はツンツンと跳ねらせまだ寝起きの顔をしている結弦だ。
「みんなみて、ユヅの髪爆発してるよ!」
配信が始まってすぐだが閲覧者は1万人近くなり、コメントの流れもはやくファンたちの注目度が分かる。
「しょうがないじゃん!こっちは朝早くてさ…!あっ、今いる場所は言えないんだけどね」
まだ寝起きのいつもよりハスキーな声と、いたずらな笑顔でそう答える結弦に視聴者のコメントは熱を上げた。
「ユヅの寝癖すごく可愛い、ユヅ愛してる、ユヅとても可愛い、ナムとユヅ大好き…」
「ちょっと!声に出して読まれると恥ずかしいじゃん」
「でもコメントそればっかりだよ!ユヅの人気はすごいからね!みんなユヅに質問したいこととかたくさんあるでしょ?コメントに書いてね!もちろん僕についての質問も大募集してるからね!」

配信が始まってから2人がどの質問に答えるかを決めながら雑談をしていた。


世界中に衝撃を起こすのはそんな時だった。

「おはよう…」
ナムでも結弦でもない、ただの朝の挨拶のはずなのに甘さの混じった低い声。視聴者たちがかすかに聞こえたその声に「ん?」と思ったその瞬間、結弦の背後から太くたくましい腕が現れ、結弦の身体を抱き締めた。突如現れた黒髪の体格の大きな男は寝ぼけた目をしたままギュッと抱き締めながら結弦の肩に顔を埋め息をスーッと吸い込み、そして次にチュッと頬に軽いキスをして歩いて行った。

まるでラブラブなカップルがする毎朝の習慣のように…。

衝撃に固まるナムと結弦。そして世界中の視聴者たち。

結弦の顔はみるみる赤くなり口をパクパクさせている。視聴者も状況が追いついてないのかコメントの流れが一瞬止まった。

ファンも…。日本中が…。いや、世界中が混乱しているだろう。

なぜなら先ほど結弦の頬にキスをしていた相手はあのエンゼルスの大谷翔平だったのだから。

「みんな…質問はもう決まったようだね…」

ナムが真顔の棒読みで言ったその言葉に、結弦はもうハハッと苦笑いするしかなかった。

そしてその数時間後にはコロナウイルスの暗いニュースを吹っ飛ばすかのごとく、世界のトップで戦うあのスポーツ選手2人が付き合っていたという明るい話題でしばらく持ちきりになりましたとさ。
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