shyz


□愛に溺れる
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いつもとは違う、暖かなぬくもりに包まれて結弦は目を覚ました。
まだ眠気があり、ぼーっとする頭で目の前にある厚い胸筋に顔をすり寄せ、彼の匂いを鼻いっぱいに吸い込む。

幸せで思わず「ふふっ」っと声が出る。
その瞬間、息が止まるほど、ギュッと抱き締められた。

結弦は顔を少し上にあげて彼の顔を見る。

「起きてたの?」

「今起きた」

んっーと伸びをする彼を気にすることなく抱きつく、やっと逢えたのだから。

野球とフィギュアスケート。2人とも一挙一動が大きくメディアに取り上げられるため、お互いのことはこうして一緒になる前から知っていた。同じ東北出身で、年齢も一緒となるとメディアも94年組として2人一緒に活躍が報道されることが多い。そんな中だと自分たちも自然とお互いを意識していた。
一緒になってからも逢えるのは1年のうちほんの数回しかない。2人共拠点はアメリカとカナダでバラバラであり、日本中の期待を一身に背負うものとして練習しているなかだと会える時間はなかなか作れない。

今回は結弦が先日の試合で負傷した右足首の診断のため、日本に一時帰国。翔平の帰国時期と重なったため急遽予定を合わせた。


離れている時はSkypeやLINEで話していたけど、こうして一緒にいて彼の匂いと肌の感触をじかに感じることが今の結弦にとってすごく幸せだ。


「ずっとこうしてたいな…」

「うん…」


時間が過ぎないでほしい。ずっと一緒にいたい。お互いのやるべきものが大きくて、それに集中しなければならないから無理だとは分かっているけど、そう思わずにはいられなかった。

結弦がふと呟いた言葉と一緒に慰めるように頭に降ってくる翔平の優しいキス。一緒にいても常に心の片隅にある寂しさをもすべて包みこむ翔平の包容力に心が満たされていく。そして自分よりもはるかに体格が大きい翔平にギュッと抱きしめられるのが何よりも大好きで、その気持ちが溢れ、結弦は顔を上げて翔平にキスした。触れ合うだけのキスから、そして見つめ合い次第に深まっていく。

互いの素肌の感触と、朝日が差し込む部屋に響くキスの音に結弦は昨夜の性交を思い出し、自然と口の中に唾液が溜まっていき身体が熱を欲しがっていくのが分かる。

「ねえ…もっとする?」

少し照れた表情を作り、舌ったらずの甘えた声でそう言う。結弦の形の良い唇はキスで赤くぷっくりとし、頬は薄ピンクに色付き情欲をそそられる。
翔平は結弦のその誘惑するような顔つきを見て息を呑み、急に視線をキョロキョロさせ恥ずかしそうに微笑んでいる。

すでに何度も体を重ねてるのにまるで中学生の男の子のように照れている翔平を見て結弦はクスクスと笑った。
自分よりもはるかに背が高く筋肉も何倍もあるのに、大きなテディベアのように愛らしい。

結弦がそんなことを考えていると、いつのまにか仰向けにされていた。そして翔平の大きな左手に両手首を一つに束ねられ、右手は結弦の身体をスルスルと優しく撫でていく。熱く柔らかい大きな舌が小さな耳をふちからじっくりと舐めていき、その刺激に自然と首も仰け反り、甘い息を吐く。そして細く長い美しい首に唇を這わせ、時折吸い付きながら鎖骨へと順にキスをしていく。

先ほどまで、初々しく恥ずかしそうにしていた翔平の顔は一変し目は逸らすことなくギラリと結弦を見つめ続け、獲物を狙う獣のような表情だ。結弦が思っていたテディベアなんてとても言えない、野生の熊のように、誰も見たことない、結弦にしか見せない表情。これから全身を覆いつくすような快楽に支配されることを想像すると、臍の下辺りがズンっと疼く。

翔平の唇が触れたところが熱く身体がいちいちビクッと反応し腰が浮いてしまう。何もかも忘れられそうなビリビリとした甘い刺激…

右足首の怪我、先の見えない不安、氷に乗れないもどかしさと悔しさ、今はすべて忘れて、ただ彼の愛に溺れていたい…

結弦は翔平の腰に両足を回し彼を強く引き寄せた…
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