二次創作BL:闇に歌えば


□どうした…?
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「課長、今日の報告書です」

そう言って渡された書類をめくりながら、万来課長は眠そうな目をこちらに向けた。

「坊やも仕事になれてきたね、書類のミスが減ってきてる」

「そりゃ、まだ入職1年目ですけど、ヤミブンには長くいますからね」

この春、アルバイトから社員になったばかりの、楠木誠志郎は両手を挙げて大げさなため息をつく。

「でもここ抜けてるから、もう一度やりなおし。モノを確認しながらね」

「…えっ?!あれをまた見ないといけないんですかー?!!」

「まだまだ独り立ちは難しいねぇ」

提出したばかりの書類を受け取り、隣の倉庫をあける。
そこにはヤミブン(正式名称は特殊文化財課)が集め、保管・保護している品々が所狭しと並べられていた。
1人通るのがやっとの狭い室内で、しかも先客もいる。目当てのモノは1番奥だ。当然先客とすれ違わなければならない。

「なんだ、坊やか」

「そこ通るんだけど…」

「…また書類ミスか?まだまだ坊やだな」

「うるさいよ!」

誠志郎は相手を睨みつけるも、身長差がありすぎて迫力はない。
ふっと嫌味な笑いを向けてきたのは、有田克也だ。一応先輩なのだが人として尊敬できないため、アルバイト時代から敬語は使ったことがない。

「(無駄に顔が整ってるのもムカつく…)」

克也は退くつもりはないらしく、棚に手を伸ばしてなにやら物色している。
それならこちらも気にしてやる必要はない。
無理やり通ってやる!とわざと前から押しのけるようにして通りすぎようとし、誠志郎は盛大に棚に肩をぶつけた。

「痛っーー」

「……!!…バカ!!」

「………っ!!!」

ぶつけた反動で、ちょうど棚に手を伸ばしていた克也に体当たりしてしまい、克也の背が棚にぶつかる。
その拍子に上にあった紙袋や箱が2人に落ちてきた。
とっさに目を瞑り手を頭に持って行くが、その前に頭を強く引き寄せられる。
薄目をあけると足元には紙袋から出てきたのか、書類や小物が散乱している。

「……………い…たくない……??」

「…そりゃよかったな」

声の方に顔を向けると、目の前には整った顔がある。克也が頭の後ろを抱き寄せられるようにして、自分を庇ってくれたらしかった。
大きな手が優しく後頭部から項を流れて、名残惜しそうに離れていく。
誠志郎は動揺で心臓がバクバクいっているのを悟られないようにぱっと距離をとった。

「あ…ありがと…」

「まぁ、これ以上バカになられても困るからな」

「余計なお世話だ……って……俺の書類がない……混ざっちゃった!?」

悲痛な叫びを背に、克也は書類の散らばる部屋から足軽に出て行ってしまう。

「頑張れよ」

「……………………………」

手をひらひらさせて去って行く先輩を見送り、書類のやり直し以前の気の遠くなる作業を前に、誠志郎は呆然としてしまった。
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