たかせまるを
『キスしないと出られない部屋』
に監禁してみた
西野side
「これ...どうしようね..?」
「あ...でも、コレ自体がクイズやったりせえへんかな...ッ?」
「なるほどぉ。暗号、ってことかぁ...」
「こういうの、得意やないから、わからへんけどさ...っ」
ベッドに座りながら、
ななたちが凝視しているのは、テーブルに置かれていたモノ。
ラミネート加工が施されていて、
“指令”という文字が頭に記載されたソレ。
そこに書かれていたのは──
『ー指令ー
この部屋は、
“キスをしないと出られない”部屋です。
24時間以内に実行できなければ、
プレイヤーは、即脱落となります。
すみやかに実行しなさい。
支配人N&W』
この文面を理解した瞬間、
ななも、隣にいるかずみんも、固まってしまって。
なにより、酷いのはななたちが居る場所。
ー赤い照明に灯された白いダブルベッド。
ーガラスで外から丸見えなバスルーム。
ー枕元に添えるように置かれた避妊具。
男女がそういう事をする、
いわゆる...ラブホテル、みたいな部屋で。
──そもそも、なんでこんな場所に監禁されてるんやろう。
最後に記憶にあるのは、乃木中の撮影後。
いつものように、
かずみんとくだらない話で笑ってたら、
帰る準備が遅くなってしまって。
二人残された楽屋で、帰る準備を始めたその時。部屋中が白い煙に包まれて、気を失ってしまった。
目が覚めた時にはーー
この部屋のベッドの上やった。
唯一の救いは、かずみんが一緒ってこと。
目を覚ましたかずみんと、
“なんか、ハレンチだよね...ここ”
“ふふっハレンチ...?まぁ、そうなんかなぁ”
“あれ、ハレンチって言わない?こういうの”
なんて、こんな状況下でも笑ってた。
それが今。
目の前に用意されたこの“指令”のせいで、
全く笑えなくなって。
『キス』のニ文字に、
さっきから心臓が異常に跳ねて、耳が尋常じゃない程熱い。
心の奥底にひっそりと閉じ込めた気持ち。
もしも、溢れてしまったら。
彼女に、バレてしまったら。
....それだけが怖くて。
「本当に、チューしろ!ってこと、じゃないよね...さすがに」
「で...でも、もしかすると、単純に、
しないと出られへん、っていうことも...」
「あぁ...えー....ダメだよ...それは...」
肘を摩りながら頭を悩ませてるかずみん。
今彼女が考えてること、なんとなくわかってる。
かずみんが好きなのは──愛未やもんな。
ななとなんか...キス、したくないやろうし。
目頭が熱くなって、込み上げてくるものを、
必死で堪える。
かずみんと愛未が付き合ったら、
笑顔でおめでとうって言えるように、
ならないといけないんやから。
ーーそれなら、
この指令を遂行してしまおう...っ
今日を機に、かずみんのことは忘れよう...。
ずっとこんな気持ち持ってたら、あかんよな。
「ななは...キスぐらい...してもええけど..っ」
「え、いいの...?なぁちゃん...?」
「ほらっ、さゆりんと真夏やってよくやってるやろ?スキンシップみたいな感じで。
だから、別に...ええかなぁって」
スキンシップ。
上手い言い訳やと思う。
これで、かずみんも納得して──
「.....ダメ、だよ。」
「....えッ..?」
「なぁちゃんは友達だから。
そういうコトはちゃんと、“好きな人”と
.....するべきだと思うし」
「.....“愛未”、とか、、?」
「そ、だね...。“じょー”とかが良かったね」
“でも、たぶん暗号かなんかだよっ”なんて笑って、なんとか解こうとしてるかずみん。
堪えていたものは、すぐに限界がきたみたいやった。
見えている景色が潤み出して、手の甲で拭う。
「これどうやって...っ、、ぇ、なぁちゃ」
「かずみんはさ、あみに、告白ッ、とかせえへんの...?」
「....へ?じょー?なんで」
「好きなんやろ...?あみのことッ」
「...!ち、ちがうよ...っ、じょーはただの」
「もぅ、、とぼけんといてっ」
手をブンブン振ってとぼけるかずみん。
さっきやって、じょーとかが良かった、
なんてボロが出たのに。
認めてくれた方が、こっちやって楽やのに。
「そもそも、じょーを好きなのはなぁちゃんでしょ?」
「....は..っ、もう、何言って...」
「だってさっき、『愛未』って言ってたし...ッ」
「あれは、
かずみんの“好きな人”を言ったんやんかっ!」
「私だって、
なぁちゃんの“好きな人”の名前をッ」
ふらふらと揺れるかずみんの瞳。
弱々しくて、焦った色が滲んでて、どこか悲しげで。
その瞳に隠された意味を、少しづつ理解していく。きっと、思い違いじゃない。
ななの勘違いも、かずみんの勘違いも。
二つが解れた瞬間、浮かび上がる可能性。
願っても叶わないと思ってたもの。
もしかしたら...なんて気持ちが、鼓動をさらに早めていく。
「か、ずみん...っ、あの、なな、その」
「...私、じつは...ッ」
「まって。ななから、言いたいな...」
「ぅー...じゃあ、、おねがいします...」
顔が熱い。
かずみんの顔も真っ赤やった。
おそらくななの顔も、かずみんと同じ。
照明のせいなんかじゃない。
「ずっと..かずみんのこと、好きやった..」
「私も、なぁちゃんのこと...好き、です..」
「へへ...うれしいっ」
「アァ、、わたしも、嬉しいです」
「ふふ、なんで敬語なん...?」
「いやぁ、だって、緊張して...」
「なぁなぁかずみんっ、コレできるんやない?」
二人して、もう一度“指令”に視線を移す。
あわあわしちゃうかずみんは、なな以上に余裕がなさそう。
でも、ここはやっぱり、
かずみんからして欲しいなぁ...なんて、
イジワルかな。
ふぅぅっ、と深呼吸しているかずみんに笑って、ななも一緒に深呼吸。
「じゃあ、しますっ...目、瞑ってて...?」
「ん...ふふっ」
「こらー。笑わないの」
そんなん言ってるかずみんやって、笑ってるやん。
フニっとくっつく唇が、弧を描いてるの、
分かってるんやからな...?
彼女の首に腕を回しながら、ななも笑った。
キスしながら笑うなんて、なな達らしいかも。
ガチャッ、とドアの方から聞こえた音。
聞こえないフリをしながら、かずみんを引き寄せると、ゆっくりと唇だけが離れていく。
「ん、ふふっ聞こえた...?」
「聞こえへんかった...」
「じゃあ、まだ出れないね?」
「うんっ、まだ出れへんな?」
再びパクっと食べられて、何度も角度を変えて、気持ち良さに溺れて。
“指令”以上のコトが始まるのを、
愛未とまあやが止めに来るまで後五分──。
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モニタリング室にて
能「あの二人の誤解、解けたかなぁ〜。
全然くっつかないからなぁ」
和「大丈夫っしょ!
ほら見てっ、チューしてる!きゃー!」
能「おー。いいねぇー、鍵開けるかっ」
和「いや、さっき開けたけど、出ようとしないんだよね!気づいてないんじゃない?
え!てか待って!ずー服脱ごうとしてるー!」
能「ヤバいヤバい、放送事故ッ、一回カメラ切るわ」
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