タプテソ

□一緒に溶けたもの
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楽屋を抜けて、僕はあまり使われない階段の隅に座り込み、1人物思いにふけていた。
タッピョンやスンリの言葉に傷つかなかったって言ったら嘘になる。でも僕は1番僕自身にがっかりした。僕、本当に1人じゃなんにも出来ないんだなぁ。予めタッパーに入れていたフォークでシフォンケーキを刺して、食べてみる。
・・・うん、不味い。
なんで僕、味見しなかったんだろう。なんだか塩っぱい味がした。塩なんて入れないのに。砂糖と間違えたのかな?
だんだんと目の前が霞んでいくのに気付かないフリをして、僕は淡々とシフォンケーキを食べ続けた。


「あれ?テソン、こんな所で何してるの?」

声のする方へ顔を向けると、そこにはユノさんがいた。しまった、場所を間違えたか。
今は誰とも会いたくなかったのに・・・
そんな僕の気持ちに気付かないのかユノさんは、
なんとも自然に僕の隣に座った。
まさか座るとは思わなかった僕は急いで手に持ってたタッパーを隠そうとした。


「お!これ、テソンが作ったの?」

けれど、先輩の目を誤魔化せるはずも無く、呆気なく僕の不出来な産物は見つかってしまった。
僕が黙って何も言わないことを肯定と捉えたのかユノさんは笑みを浮かべながら優しく話しかけてきた。

「ねぇねぇ、それ俺に一口頂戴?今日朝から忙しくて、何にも食べてないんだ〜」



「・・・全然美味しくないですよ」

なぜユノさんがこれを食べたがるか、ということよりもこの失敗作の存在が知られたことがなんだかショックで、僕は拗ねたような返事をしてしまった。けれどユノさんは全く気にしてない様子で勝手に僕からフォークを優しく奪う。

「いただきます!」

そしてパクリと一口。味のないシフォンケーキを食べた。



「おいしい!!」



「えっ?!」

リアクションが怖くて耳を塞ぎたい気持ちだったけど、想定外の反応に驚いてユノさんを見上げる。彼の顔は思ったよりもずっと近くにあった。

「おいしいよこれ、やわらかいし」

ぱくぱくと次々口に運んでいることと、満面の笑みからして無理をしているわけでもなさそうだ。

「嘘でしょ?」
僕はユノさんからフォークを奪って自分でももう一度食べてみた。隣で先輩が顔を少し赤くしているのなんて目に入らなかった。


「っう、やっぱまずいですよ!!」


「え〜?そんなことない!手作りは、その人の気持ちも入ってるから美味しいんだよ」



「そうは言いますけど・・・あんまり食べるとお腹壊しちゃいますよ・・・?」


「大丈夫大丈夫。俺、昔拾い食いしても腹壊さないタイプだったし。全部食べてもいい?」


まさかの言葉にびっくりして何も言えないでいるとユノさんは僕からフォークを奪い返し、あっという間にあの失敗作を完食してしまった。


「ごちそうさまでした〜!ありがとうテソナ!
おいしかったよ」


・・・フフフ、なんだか変な先輩だなぁ。
案外先輩っておバカなのかも??
そんな風に思うのに、なぜかとっても僕の心は暖かかった。ニコニコと笑いながらこちらを見つめるユノさんの顔をみて、涙が出そうだった。
どうしてなのか、僕もよく分からなかったけど。

「・・・良かったらこっちもいりますか?」

タッピョンから固いとお墨付きもらってますけど、と冗談でもう1つの失敗作を差し出すと

「ホントに?俺、犬ってチャンミンに言われるぐらい歯強いから平気!」

「フフフッ、変なの」

「わぁ、やっと笑ってくれた!」

優しく寄り添ってくれて元気づけてくれる本当に太陽みたいな人だ。なぜかユノさんのおかげでずっと抱えていた胸のモヤモヤがすっきりと晴れた。・・・ユノさんの前ではちゃんと自分を出せるな。こんなことは久しぶりだった。メンバー以外では。


「・・・ユノヒョン、本当にありがとう」

「おっ!やっとヒョン呼びしてくた!」

ユノヒョンは僕の中でずっと、緊張しないといけない先輩っていう立ち位置だったけれど、なんだかそういう先輩後輩とかいう枠を超えて、仲良くなれそうな気がした。
先輩にお礼を込めてハグをすると、少し驚いた顔をされたけれど、すぐに笑顔になって僕の背中を優しくさすってくれた。ユノヒョンの対応に1人満足した僕は楽屋に戻ることにした。
もう胸のつっかえはなくなった
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