創作


□王子様を助けに
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 囚われの王子を救出する、それが今夜の私の仕事だ。

 現場は山奥にある洋館。敵は門番の他、館の周辺にも配置されている。

 それでもどうにか館に侵入したところまでは予定通り。

 王子は最上階にいるらしい。階段は二ヶ所。どちらを選ぶか。

 少し気になっているのはここまで順調過ぎること。なぜこんなにもすんなり洋館に忍び込めたのか、不思議ではある。

 まあいいや、早いとこ終わらせよう。

 気を取り直して先へ進む。最上階は四階だ。

 と、二階の踊り場に差し掛かったときだった。


「あっ!」


 小さく声を上げたのは、槍を小脇に抱え、階段に腰を下ろしている男だ。

 敵だ。私は小刀を構えた。


「ああ、やっちまった……」


 男はうろたえ、手から何かを落とす。

 ……え。何これ。おにぎりなんだけど。


「すんません! 俺とは会わなかったってことにしてもらえねぇですか?」

「は……」

「頼んます! あなたに出くわしたと知れたら給料が減っちまう。それどころかもらえないかもしれねぇ……。先月に二人目が生まれたばっかなんです。妻と子供にうめぇもん食わせてやりてぇのよ」


 手を擦り合わせて頼まれる。

 これは命乞いなの?


「俺はもう行くから」


 男は背中を見せて立ち去る。その様子から、私はもう嫌な予感しかしない。

 おそらく門番も、館の周りにいた人たちも、私が来ることを知っていたのだ。それなのに気づかないふりをして、私をまんまと最上階へ向かわせている。

 つまり黒幕は、私をおびき寄せようとしている。

 うわあ……、とっても行きたくない。

 というのも、私の脳裏にはある男の影が浮かび上がっていた。

 そいつのことは半年ほど前に知った。彼が連れ去ったという姫君を取り戻してほしいとの依頼を受け、彼の邸に忍び込んだのだが、姫君は連れ去られたわけではなかった。

 あの時のことを思い出すと、イライラする。

 私はさっさと階段を上る。苛立ちを隠さず足音を立てながら長い廊下を歩く。

 部屋のドアを片っ端から開けていけば、王子はあっさり見つかった。


「やあ、いらっしゃい」


 囚われの王子、の横に立っている青年を、私は睨みつけた。


「どういうつもりだこの悪党!」
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