創作


□白玉黒蜜きなこソフト
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「白玉黒蜜きなこソフト」


 ゲームオーバー。俺にはそう聞こえた。

 彼女はただデザートを注文しただけだ。だが次の瞬間、世界は強制的に幕を閉じる。

 気がつくと、俺はベッドの上で朝を迎えたところだった。

 また朝から、やり直し。



 今日は彼女との初めてのデートだった。待ち合わせは駅前広場。彼女は俺より少し後に現れた。

 ごめん、待たせた?

 いや、待ってないよ。

 定番のやり取り。それから初々しく手を繋いだりなんかしながら街を歩いて、店を見たり、映画を見たりした。

 今日は真夏日だったこともあり、彼女はよくアイスやかき氷を食べたがった。冷たいもんばっか食べると体によくないぞ、なんてつい心配になって言ってしまうと、まるでお兄ちゃんだねと笑われてしまった。

 だから最初の夕方、彼女がまたアイスを頼もうとしたときは、もう余計なことは言わなかった。

 言えばよかった。と、後悔してから数十回。

 あの呪文「白玉黒蜜きなこソフト」を彼女が唱えるたび、なぜか時が巻き戻る。気がつくと自分の部屋のベッドで寝ている。アラームを止めながら起きる。準備をして出かける。これをもう何度も繰り返している。

 どうすればいい?

 まもなく夕方だ。彼女の、呪文詠唱の時が近づいている。


「ねぇ、このお店に入ろうよ」


 最初の日にも来た甘味処だった。ここの人気メニューが例の「白玉黒蜜きなこソフト」だ。

 この店に入れば、アウト。

 しかし、だからといって店を変えても、必ずメニューに「白玉黒蜜きなこソフト」があるという罠だった。

 店に入るからダメなのか。

 そうだ。店に入らなければメニューも何もない。

 俺はどうにか彼女を諦めさせ、そろそろ夕日が見頃だろ、なんて気取ったことを言いながら公園を目指した。

 無限と思われたループの出口が、かすかにだが、見えてきている気がした。

 行ける。

 ひそかに拳を握りしめる。

 その時、不意に彼女が立ち止まった。


「飲み物を買ってきていい? 喉渇いちゃった」


 確かに喉が渇いた。少し離れたところにある自動販売機まで、俺も一緒に歩き出す。


「どれにしようかなー。あ、期間限定のもあるよ。私これにしようかな」

「どれ?」

「白玉黒蜜きなこソフト」





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