創作


□蕎麦が伸びる。
1ページ/2ページ



 十中八九、オレみたいなやつは報われない。


「私ばっかり好きなんだ。わかってるの。いつもそうなんだもん。私ばっかりドキドキしてるし、不安になるし、空回りしてる。馬鹿みたい」


 陽菜はそう言いながら賑わう学食のテーブルに突っ伏した。どうやら彼氏に近づく女の影にやきもきしているらしいが、おそらく杞憂だろう。端から見れば呆れるほどの両想いだ。何をそんなに不安がるのか、オレにはよくわからないが――まあ、わかりたくもないんだけど――彼女は今日もたった一人のために一喜一憂しているのだった。


「ね、ヒロちゃんはどう思う? やっぱり私って子供っぽい? 服装とかメイクとか?? 月島くんはどういうのがいいのかな。大人っぽいのがいいなって思ったりするのかなあ」

「いや、おまえと付き合ってるんだから、おまえみたいなのが好きなんだろう」

「そうだけど……でもでも、昨日はパンケーキの気分だったけど、今日はわらび餅の気分って時もあるかもしれないし」


 そういえば今日のおすすめメニューAはパンケーキ、Bはわらび餅だった。どっちも甘味かよと思いながらオレはおすすめを素通りして蕎麦にしたが、陽菜は迷いに迷ってパンケーキにしたらしい。

 浮気の心配、というよりは、自分の魅力に自信を持てない、そんなところだろう。端から見れば呆れるほどの両想いでも、相変わらず本人の自覚はないらしい。

 あいつ、言葉とか態度にするタイプじゃないもんなー。

 それでも見え透いてしまうくらいには、こいつのこと、大好きなんだろうけど。


「おまえが好きになった男は、そんなふうに日替わりで女を選ぶような男なの?」


 蕎麦、伸びそう。


「違うよ! 月島くんはそんな軽々しくないよ!」

「いやいや、おまえが言った台詞なのに、オレをなんてひどいこと言うのみたいな目で見るなよ」

「ご、ごめん……」


 落ち込んだり怒ったり謝ったり、忙しいやつだ。


「オレもそう思うよ」

「……うん?」

「あいつは簡単に靡くような男じゃないって、おまえが一番よく知ってるんじゃねーの?」


 それでも諦めないで一途に想い続けて、子供っぽくても何でもそういう陽菜だから、あいつ――いや、オレもだけど――おまえのこと、好きになったんだろう。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ