KOOKV

□初体験
1ページ/9ページ

【グクside】

「ん……はぁっ」

僕が大好きなヒョンの顔が苦痛に歪んでいる。
その表情さえも美しい、なんて呑気なことを考えてしまう自分がいる。

『ヒョン、大丈夫ですか?ごめんなさい、苦しいですよね、やっぱり…』

「だめ、やめないで!だい、じょうぶだから…!」

『……ヒョン、痛かったら無理しないで言ってくださいね』

なぜこのような状況になっているのか。
事の始まりは約1時間前。
いつも通りメンバー全員で飲んでいたが、お酒に弱いテヒョニヒョンは一番最初に酔い潰れてしまった。
それをみたナムジュニヒョンが「今日はもうお開きにしよう。ジョングガ、悪いが部屋まで連れて行ってやってくれ」と言い残し、ヒョンたちはみんな部屋に帰っていった。

まだ眠っているテヒョニヒョンをそっと抱きかかえる。想像以上に軽い。とりあえず自分の部屋のベッドに寝かせた。
目が覚めるまで一緒にいてあげよう。
ヒョンは本当は寂しがり屋だから起きた時に
1人ぼっちだと可哀想だからね。
そう思ってゲームをしながらヒョンが目覚めるのを待っていた。
それにしても全然起きないなぁ、と思い顔を覗き込んでみる。
んふふ…やっぱり綺麗。
何年経っても衰えることを知らないその美貌を
僕はみんなの前でも頻繁に賞賛している。
その度に少し照れるヒョンが可愛くて仕方ない。そんなヒョンを見たくてわざわざ口に出して褒めているのかもしれない。

美しくてあどけない寝顔を眺めていると
ふと、ある醜い願いが浮かんできた。
(僕だけのものにしてしまいたい)
さらさらの髪を撫でながら
『ヒョン…好きです。』と呟いた。
うっすら目を開けたヒョンがふわっと微笑んだ。聞こえちゃったかな?

「…ぼくの方が好きだよ…ほんとに好き」

(え?ヒョン、今なんて言った?)

驚いた僕の顔を見てヒョンはハッとしたように

「ご、ごめん!寝ぼけてただけだから忘れて」

そっか。そうだよね…笑
一瞬でも期待しちゃった自分が馬鹿みたい。気がつくと僕は泣いていた。ヒョンは驚いた顔をしてごめんね、と言いながら僕の涙を拭ってくれた。

「グガ…!?何で泣いてるの?」

『冗談でもそんなこと言わないでくださいよ…』

「え…?どういうこと?」

『僕は本当にヒョンのこと好きなのに!!』

涙が止められなくなった。
もうダメだ、隠しきれない。

「僕も好きだよ!?大好き!!」

今だけはヒョンの顔なんて見れない。
でも声で分かった。ヒョンも泣いてるみたい。

『本当ですか?信じてもいいんですか?』

「信じて。グガは僕が初めて好きになった人。僕の方がずっと前から好きだったんだから笑」



いつからだろうか。
尊敬が恋愛感情に変わったのは
自覚した時には手遅れな程、愛していた。
いつしか僕にとってこの世で一番大切なものになった。失うのが何よりも怖い。
だから必死に隠してきた。
絶対に気づかれてはいけない。
ずっとこのままの関係で居ようと決めた。
苦しいけど全てはヒョンのため。
まぁ、伝えたとしても叶うはずもないのだから。

それがたった今、叶ってしまったらしい。
信じられない。
自分の夢のために捨てた青春が今になって始まろうとしている。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ