男子高校生の(クズな)日常
□01大本命、彼女
1ページ/2ページ
「お。やったね。夢莉、今年も一緒」
「うぇーい。よろぴこ」
「あ、紗英もいるよ。うわ、梓もいんじゃん。ウケる、なんかうるさいクラスになりそう」
1年の時も同じクラスだった愛梨と共にクラス発表の貼り紙を確認して、新しい教室へと足を踏み入れた。
4月の全てが新しくスタートする感じは嫌いじゃない。
新しいクラスメイトたちに声をかけられながら名前の順に決められている自分の席に座ってLINEを開く。
案の定、なかなかの数の通知が来ていた。
"夢莉とクラス離れた〜!(泣)"
"休み時間会いに行くね"
"同じクラスだよ!よろしく"
...
どれもこれも似たような文面に似たような返事を返していく。
自分でもマメな性格だと思うから別に苦じゃないけど流石に多すぎ…ちょっと減らすか。
向こうが好いてくれるから、なんとなく断らずに相手をしていたらいつの間にやら凄い数になってしまっていた。
ま、こっちも良い暇つぶしになるしwin-winじゃんね。
「夢莉。おはよ」
「紗英さまおはー」
「よかった、夢莉とか愛梨いて」
「2年は修学旅行もあるからクラス分け大事やもんな」
「いやほんまによ」
紗英さまは、1年のときは違うクラスだったけどバイトが同じだから放課後は大半一緒に過ごしてる自分とは正反対のとってもオシャレ男子だ。
人の話を聞いていないようで聞いていて、何事にも興味なさげに見えて意外と親身にもなってくれる、なんていうかちょうど良い距離感を保ってくれる紗英さまは信頼している数少ない友達の中のひとり。
「ゆーりちゃん〜!」
「おー、梓。おは〜」
「うれしいー!ゆーりちゃんと同じクラス!」
「はいはいよかったねぇ」
「もー冷たいぃ!」
梓は…なんで仲良くなったんだっけ。
なんか友達の友達とかそんな感じ。
ノリがよくてそこそこ可愛くて、冗談も通じて口が固い。
サイコーの女友達。
「夢莉、3階行かん?」
「何しに?」
「決まってるやん!可愛い子探し。今年の新入生はレベル高いって噂やで」
「好きですねぇ愛梨は」
「お互い様やろ」
「ボク彼女いるんで」
とはいえ可愛い子のチェックはしておきたい。見るだけはタダだと、愛梨と連れ立って3階へ向かった。
愛梨はとにかく女の子大好きで、正直女でさえあればオールオッケーなんじゃないかっていうくらいゾーンが広い。
友達も多いし、一緒に居て飽きない。
自分と愛梨は、言うならば陰と陽って感じ。
明るくて太陽みたいな愛梨とネクラな自分。
だけど相性が合うのは根本的なところが似ているからかな。
「あ、あの子かわいー」
「どれ?」
「あそこの右の子」
「普通じゃん」
「…夢莉って理想高いよな」
「別にそんなことないけど…」
熱い視線をひしひしと感じながら1年生の廊下を歩く。
ニコッと笑ってひらひらと手を振ってあげれば軽く悲鳴が上がる。
いいねぇ、やっぱりモテるって気持ちいい。
「…あ。」
「ん?」
誰かを見つけたらしい愛梨はその子に向かって歩いていく。
お構いなしに堂々と教室に入って行って、可愛らしい女の子の前で止まって名前を呼んだ。
「彩加」
「愛梨さんっ!」
「合格出来たんや?」
「愛梨さんと同じ高校に行きたくて頑張ったんです」
廊下から教室の窓の縁に肘をついて中を覗いて動向を伺う。
愛梨と話すその子をクラスメイトは羨望の眼差しで見ている。
大丈夫かな、いじめられたりしないかなあの子。
「ねぇ。あの子、名前なんてゆーの?」
「えっ!?…あ、山本彩加ちゃんです」
「山本彩加…」
たまたま1番窓際にいた女の子に話しかけると、かなりきょどっていたけどしっかりと答えてくれた。
その名前が彼女と激似で思わずクスリと笑ってしまう。
あ。ていうか、この子なかなか可愛いじゃん。
「ねぇ、君の名前は?」
「私ですか?上西怜です…」
「れーちゃん。可愛いね」
「全然可愛くないですっ!」
「可愛いよ。肌とかもめっちゃ綺麗」
愛梨の知り合いらしい彩加ちゃんといい、この怜ちゃんといい最近の女の子は可愛く出来てるんだなぁ。
「ごめん夢莉おまたせ」
「知り合い?」
「うん。同中のコ」
「可愛いね」
「じっくり育成中」
「ゲスいな〜」