男子高校生の(クズな)日常

□03男の子ですもの
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4限目終了のチャイムとほぼ同時くらいに教室のドアをガラガラと開けて廊下に出る。



「…おい、太田。せめて先生よりは後に出てくれよ」

「だってチャイム鳴ったし」

「いやそれはそうやけどさぁ」



後ろから追いかけてきた担任の金ちゃんとダラダラ話しながら1階まで降りて、職員室前でバイバイしてそのまま東校舎へ突入。
東校舎は基本的に3年の巣窟と化しているから、絡まれることも多くてキライだ。
絡まれる原因は2年のクセに目立ってるグループにいるっていうありがちなやつ。
今までイチャモンつけられたときに黙っていればまだ可愛げがあったんだろうけど、愛梨がバカなフリしてめちゃくちゃに煽るから反感買いまくり。紗英さまも何気に笑顔で毒を吐くから和解なんて無理だと悟った。



「さーやーかーちゃーん」



でも、僕だって別に怖いものは無い。
絡まれようが受けて立つし、喧嘩上等だ。
何の遠慮もせずにさやかちゃんのクラスのドアを開けてさやかちゃんを呼んだけど、睨んでくる目の多いこと。これ、地味にセンパイをイラッとさせる行為らしい。
ふふん。そりゃあ学年人気の女のコを後輩に取られたなんてさぞ悔しいでしょう。
でも残念。さやかちゃんはもう僕のものなのです。



「もー、屋上で待ち合わせって言ったやん」

「教室来られるの迷惑?」

「迷惑じゃないけどさぁ…また喧嘩売られるで?後輩が先輩の教室に入ってくんな!って」

「アイツらひがんでるんだって」

「何に?」

「僕がさやかちゃんと付き合ってるから」

「いやそれはないよ。私ひがむほどの人間ちゃうで」

「あるから!さやかちゃんはもっと自分の魅力を理解した方が良いと思う」

「はいはい。ほら、お弁当」

「たまごやきは?」

「入ってるよ」

「んふふ」



いつからだったか、たまーにだけどさやかちゃんはお弁当を作ってきてくれるようになった。
あぁ、確か紗英さまとかアカリンとかみんなでご飯食べてて、アカリンが紗英さまにお弁当を作ってきてたんだ。それをほんとに無意識にいーなぁーって呟いたのをさやかちゃんは聞き逃さなかったらしく。
料理なんてしたことないクセにお弁当を作ってきてくれたときは感動した。(一回目は全部冷凍食品だったけど気にしない)
好きなおかずはたまごやき。作ってくれる度に上達が見えて愛おしい。
お母さんに習ってるって言ってたけど、さやかちゃんのお母さんはとっても料理上手だからそのうちさやかちゃんもとっても上手になるに違いないと信じている。



「あーぁお腹いっぱい。もう入らない」

「すぐ寝転がったらお腹痛くなるで」

「さやかちゃん、膝枕して」

「…いやいや、もう乗ってるやん」

「そこに膝があったからぁー」



いい感じに眠気が来たところで少しウトウトし始めたら、さやかちゃんの手が遊び始めるのがわかった。
頭を撫でたり、耳を触ったり、色んなところを行ったり来たり。



「…どーしたの」

「相変わらず髪の毛サラサラやなぁ」

「ケアしてるもん」

「あ、またピアス増えてない?」

「開けた」

「もー、何個目よ」

「さやかちゃんに言われたくない。だってお揃いの場所開けたかったし」



手を伸ばして、さやかちゃんの耳を覆っている黒髪をそっと耳にかけた。



「ほらぁ。先生たちが見つけたら卒倒するよ」

「バレへんからええねん。それに最近はもう開けてないし何個か閉じてきてるし」

「やまもとさん」

「はい」

「ちゅーしよ、ちゅー」

「なによいきなり。しません」

「なんで」

「学校なので」

「何がダメか分かんない」

「あかんに決まってるやろ!誰が見てるかも分からんし」

「見られるわけないじゃん」

「万が一のことがあるやろ!」

「もー、クソ真面目」

「なに、悪口?」

「イイエチガイマス」



さやかちゃんの真面目なとこ、嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、なんていうのかな。
同じ数ピアスを開けてたって、さやかちゃんはテスト前はきっちり勉強するし遅刻は絶対しないし授業はちゃんと受けるし校則はほとんど破らない。
そーいうの、たまにほんのちょっとだけ窮屈。あー、自分とはやっぱり根本が違うんだなーって思い知らされる。



「ごめん夢莉、5時間目体育やねん。着替えるから行かないと」

「あ、うん。僕もうちょっとここにいる」

「授業遅刻したらあかんで?」

「わかってるよ。あ、今日は一緒に帰れる?」

「ごめん、図書室寄って帰りたくて」

「待ってるよ」

「勉強するから結構時間かかるし。今日は先帰って?」

「うん、わかった」



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