男子高校生の(クズな)日常

□02あなたの残す日常に
1ページ/1ページ




12時、起床。
大きな欠伸をしながらバスルームの扉を開けて頭からシャワーの水をかぶる。
ある程度目が覚めて寝癖が直ったら、体を拭きながら歯磨きタイム。
朝ごはんは食べない。朝から食欲ないし。
ドライヤーで髪を乾かしてすこーしワックスで整えたら、お次は服選び。
お気に入りのパーカーにジーンズを合わせて、靴下を履く。最後に香水を1プッシュ。
あ、これ誕生日にさやかちゃんから貰ったやつね。
靴はお揃いのスニーカーを履いて、駅までのんびり歩く。ちょうど来た電車に乗って、3駅ほどで待ち合わせ場所だ。
改札を出たら、すぐに見つけた愛しい人。



「さやかちゃん」

「おはよう、夢莉」

「ごめん、遅くなっちゃった」

「どこが。時間ぴったりやで」

「でも待たせちゃったから」

「そんな待ってないよ。行こ!」



お昼の13時、約束してた古着屋巡り。



「えー、どこやろ」

「ここ右かな?」

「待って、こっちちゃう?」

「えー?」

「あ、ほら!夢莉ぃ、あった!」



慣れない道に迷ったけれど。
目に入って思わずスキップ。



「見て見て」

「あ、可愛い!」

「こっちとどっちが良いかな?」

「んー、さやかちゃんならこっちじゃない?」

「じゃあこっちにする!」

「あ、ねえこの帽子可愛い」

「ほんまや可愛い」

「お揃い、する?」

「しよ!」



お揃いで帽子を買って、お店から出てすぐに被ってみる。白のバケットハットはさやかちゃんによく似合っていた。
すぐに写真の撮りあいっこになるのは高校生ならではなのかな。
お互いを撮り終えたら今度はふたりで。
色んなポーズで何回も。毎回毎回写真ばっかり撮ってよく飽きないなって思うけど、どれもこれも後から見返すと大切な思い出だったりするから。



「決めた?」

「…まだ。夢莉は?」

「僕これ。オムライス」

「私も同じのにしようかなぁ…」

「パスタはいいの?」

「んー…うん、夢莉と同じのにする」



古着屋を出て、カフェに入って。
たくさんのメニューに迷っていたさやかちゃんだけど、結局僕と同じもの頼むなんて可愛いな。



「春休みにさ、旅行行ってたやん。その時の写真見る?」

「うん、見たい。見せて見せて」



顔を近づけてふたりでスマホを覗き込む。
家族旅行での写真を、一枚一枚説明しながら見せてくれた。どれもこれも楽しそうで、見ていて優しくてあったかい気持ちになる。
さやかちゃんが残す日常に僕は映っていないけど、さやかちゃんが見ている世界には僕の気持ちが少しでも映っていれば良いなあ。なんて思いながら、綺麗な横顔を見つめて静かに今日何度目か分からない瞬きのシャッターを切った。




.


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ