男子高校生の(クズな)日常
□01大本命、彼女
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みんなが帰宅し、静まり返った放課後。
生徒たちの教室がある本校舎の2階から、渡り廊下を歩いて北校舎へ。
階段を2階ぶん上がって4階の、いちばん突き当たりの部屋の前へ立つと、生徒会室と書かれたプレートを眺めながらコンコンコンと3度ノックする。
どうぞ、と声が聞こえたら中へ入ってしっかりと施錠を。
「さやかちゃん」
「夢莉。クラス分けどうやった?」
「うん、いい感じ。紗英さまとか愛梨も一緒だった」
「そう。よかったなぁ」
「さやかちゃんは?」
「私も良かったで。朱里とか三田とかなるも一緒やったし」
「さやかちゃんはこのクラスで卒業やもんな。仲良い子いて安心」
生徒会長で、可愛いくて男女問わず人気があって先生からの信頼も厚い。
なんでこんなスゴい人が自分なんかと付き合ってるんだろっていうのはよく考えるけど、考えすぎると病むからやめる。
「なに?」
「ん?」
「めっちゃ見るから」
「えー?」
可愛いなって思って。
特に目が好き。
意思の強そうな、しっかりと色のある目。
自分には無い色。
「ゆーり、こっち」
「ん」
「もっとギュってして」
「はい、ぎゅーー」
「ゆーりいいにおい」
「そう?」
生徒会室の、上質なソファーの上でくっつきながら今日あったことをあれこれ話すのはとっても愛おしい時間。
担任が誰だったとか、委員は何になったとか。
「さやかちゃん、桜見た?」
「裏庭の?まだ見れてないねん」
「後で見に行こうか。綺麗だよ」
「うん!今度さぁ、日曜日お花見しに行こ?ほらあの桜並木のところ」
「あー、いいね!行こう行こう」
「お団子食べたい」
「うん、食べようね」
生徒会室の窓が、だんだん赤く染まっていく。今日は良い天気だったからきっと夕焼けも綺麗。
「さやかちゃん。夕焼け見よ」
窓を開けて空を見ると、予想通りとっても綺麗な夕焼けが広がっていた。
さやかちゃんを包み込むように後ろに立ってただただ食い入るように空を眺めた。
朝でも昼でも夜でも。空を見るのは好き。
「綺麗やなぁ…」
「そうだね…」
夕焼けってなんとも言えない気持ちになる。
切ないしエモいし、なにこれ。
「あー、暗くなっちゃう」
「帰ろうか」
「そやなぁ。夢莉、今日バイトは?」
「今日は休み。だから家まで送るよ」
「ありがと」
ちゃんと生徒会室の鍵を閉めて、手を繋いで廊下を歩く。
これが出来るのもあと1年か。
いや、さやかちゃんが生徒会長を引退するまでって考えるとあと半年もないのか。
時間って尊いな。