Short Story

□君と過ごした1週間
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『七瀬〜うどんの中は何がいい?』

「きつねうどんがいい。」

さっきまでと違って少し元気の出てきた七瀬は遠慮することなく俺に注文をしてくる。
それにしてもこっちに来て最初に作る料理がうどんになるとは。
そもそもきつねうどんって料理と言えるんだろうか。

『とりあえずきつねとネギと・・・夜と明日の朝の分も買っとかなきゃな。』

昼は七瀬のリクエストを聞いたので夜は俺の食べたいものにしよう。
オムライスとかでいいかな。
必要なものをろくに期限も確認せず次々と買い物かごに入れていく。

理由は簡単。
お腹がすいてはやく帰ってご飯を食べたいからだ。

『七瀬。帰るよ。』

「うん、分かった。」

お菓子コーナーで名残惜しげにお菓子を見ていた七瀬は俺を追い越してレジへ向かう。
俺はひとつため息をつくと七瀬が見ていたお菓子をカゴの中に放り込んだ。

『1週間か・・・それも全部俺の奢りだ。』

1週間お金が持つかどうか不安になりながら俺はレジの方へ向かうのだった。



そしてその夜

途中までは特に大きな問題はなかった。
ご飯も普通に食べた。
お風呂はシャワーで充分な俺はサッと浴びるだけで済ませゆっくり浸かりたい七瀬は俺の後に入った。
髪乾かして〜と甘えてくる七瀬に昼間の面影は全くない。

兄がいて甘えん坊気質なんだろう。
ここで断ると愚図られそうなので大人しく言うことを聞くことにした。

俺の上に座って上機嫌に鼻歌を歌う七瀬。
同じシャンプーを使っているはずなのに七瀬からは随分といい匂いがした。
なんだか変な気持ちになりながらもなんとか髪を乾かす。

問題が起きたのはこの後だった。
この家にベッドはひとつ。
当たり前だ、一人暮らしなんだから。
一応誰かが泊まりに来た時のために布団をいくつか用意して押し入れに放り込んでおいたのだがまさか初日から使う羽目になるとは。

さて、問題はどっちがどこでどう寝るかだった。
正直下宿初日ということもあって少し気分が舞い上がっている俺はベッドで寝たいという気持ちがある。
だけど女の子を床に敷いた布団に寝かせて自分はふかふかのベッドで気持ちよく寝るのも気が引ける。

悩みに悩んだがここは紳士としてレディーを優先することにした。

『じゃあそろそろ寝るか。七瀬はあっちの部屋にあるベッドで寝て。俺はここに布団敷いて寝るわ。』

「えっ!待って、一緒でええやん!」

『言いわけないだろ。年頃の女の子なんだぞ。』

「でも・・・」

そう言って上目遣いに俺を見てくる七瀬。
俺はすぐに視線をそらす。
七瀬のこの目線に俺はすごく弱い。
目があえば気づけば頷いてしまいそうになるに違いない。
ここは男を押し通さなければ。

『七瀬。「ダメなん?」』

七瀬を説得しようとした俺はその時つい七瀬と目が合ってしまった。
その瞬間負けを悟った俺は両手を上げて降参のポーズをする。

『わかった。でも今日だけな?信用してくれてる七瀬の親に合わせる顔がないから。』

「うん!わかった!」

ケロッと笑顔になる七瀬。
多分俺がその顔に弱いということはバレてるんだろう。

下宿初日とは思えないイベントが盛りだくさんだったこの日の最後のイベントは七瀬と同じ部屋で寝ることに決定した。
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