あいつとは、反りが合わない。
…あいつとは、名前も言いたくないけど紫苑のこと。
紫苑は”私の”マスターである茜にベッタリだ。
…いや紫苑のマスターでもあるけどさ?
私達は茜に召喚された。
ずっと一緒だから仲良しだと思われるんだけど、実際は真逆で仲が悪すぎるくらい。
いっつもお互いを罵倒し合ってる。
だってそりゃそうじゃん?
私達は聖系で、紫苑達は魔系なんだから。
属性がそもそも違うから、気が合うことが中々無いのよ。
まぁ属性もあるけど、性格が嫌い。
だってあいつ、根暗だったのに今じゃドSだよ?
変わりすぎ。
それに、上から目線な物言いも腹が立つ。
茜を連れ去ろうと企んでるの知ってるんだから!
…でも根暗なとこは無くなってないみたい。
全部変わり切ってなくて、ちょっと、本当にちょっとだけ…安心した。
綺麗な髪も、あの瞳も、…優しい所も、何も変わってなかった。
…紫苑、ごめんね。いつも言いたくない暴言吐いちゃって。
私ね、紫苑のこと、大っ嫌いで、大好きなんだ。
それを隠したくて、いつも酷いこと言っちゃってる。
君と初めて会った時からずっと。
この恋と呼べるのか分からない感情も、君がくれた。
でも、これはきっと、叶わないんだ。
だっていつも酷いこと言っちゃってるし…
それに紫苑は…あいつは茜のこと好きなんだろうし。
私も茜のこと大好きだよ?
君に負けないくらい。
でも、紫苑への気持ちと、茜への気持ちじゃ全然違うんだ。
もちろん苦しいよ?とっても辛いし。
でも、今のこの関係を壊したくない…
くだらないことで喧嘩したり、笑ったり、お互いを励ませる、この関係がいい。
いつか来る別れの時まで、ずっと傍にいたい。
君の傍で、君のいろんな姿が見れるなら十分幸せ。
君と一緒にいる。
それだけが、私のたった一つの望みなの。
《ずっと隠しているから、傍にいさせて》