夢追う君に、手を伸ばし U
□神様の試練
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「あれ?今日誰か家に来た?」
夕飯の時に冬美さんから声をかけて、肩がびくつく。
それでもなんとかポーカーフェイスを気取って、味噌汁をすすった。
「…どうかしたんですか?」
「ううん、急須に茶葉が入ってたから。誰か来たのかなって思っちゃっただけ。」
ああああ!湯のみ洗って元に戻して、証拠は全部隠滅したと思ったのに!それが残ってた!
昨日焦凍君にツメが甘いななんて思ってたやつ誰よ!?
人のこといえないくらいわたしもやばいじゃないの!?
「あ、俺飲んだ」
「そう?だったらいいの。」
ああああ!ありがとう!焦凍君!
本当に昨日は無礼なこと思ってしまってすみませんでした!
「まあもしお客さん来ることあっても無理に上げなくてもいいからね。あっ、美恵ちゃんのお客さんなら例外だけど滅多にないだろうし…。」
「そうですね。」
すみません!その滅多にないお客さんが来ちゃったんですよ!
例外使ってもいいですよね!
ああああ、茶碗を持つ手も震える!
まだ警察の人が帰ってからそんなに時間が経ってない中で、こうやっていつもの食卓を作り出すのは至難の技である。
結局刑事さんたちとお話ししたのはお茶を出してから10分くらい?めちゃくちゃ短いからメンタルゴミなわたしには助かったし、来客の痕跡を隠滅した後すぐ帰ってきた冬美さんにばれずに済んだ。
でも思い出すだけでまだ心臓はばくばくしてるし、頭の中もカオスだ。
20歳超えてたら確実にお酒に逃げてただろうし、今も伸ばしそうになる手を押さえてます。
だって、やっと目標が見つかったっていうのに神様からの試練が急すぎる、重すぎる。
刑事さんと過ごしたほんの10分、聞かれた数種の質問。
うまく答えられた自信はないけれど、わたしが今どの立ち位置にいるのかが大体わかった。
いつものわたしだったら、色んな最悪を考えて備えてたからこんな自暴自棄にはなってないんだけど。
こんなの備えられるはずがない。
ヒーローの味方になれるように頑張ろうって決心したばかりなのにさ、敵なんじゃないかって疑われるなんて。
どこの誰がそんなの想像して対策を立てるの。