夢追う君に、手を伸ばし U

□神様の試練
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「………」


相手はまるで唖然と言った顔をしてる。

わたしもだ、つい口から出てしまったけど、なんてこと言ってるんだろ。

自分を守れ、だなんて。

でも誰が敵になっても、焦凍君は守ってくれる。

そう思うだけでなんでもできる気がする。




「敵連合にだってまた出会えば、わたしの個性は脅威になる、今度は一秒あれば情報は読み取れる。敵の嫌がることは進んでする。」


あ…なんかとんでもない思想を露呈してる感覚。

でもそれもヒーローの味方になりたいから、そういう気持ちの表れであって。

いや伝わるか?これ。


「………」

「黙らないでって!自分でも性格悪いって気づいてるから!」

「いや、どっかで聞いた気がしただけだ。それ、おじさんの戦い方だな。」

「え?」

「敵の嫌がることを進んでするって、職場体験の時にサイドキックの人にいわれた。おじさん人の弱点つくのがうまくて敵に同情したって」


…お父さんも十分性格悪かったんかい。


「…じゃあこれもお父さんの血なのかな?敵に背中向けたくない。」

「逃げろよ。」

「そりゃ足手まといだし逃げるけど感覚的には一矢報いたい感じもあるっていうか…」

「逃げろ。」

「逃げるにも石だけぶつけてから、逃げたいっていうか」

「さっさと逃げろ。」


焦凍君がその言葉をエンドレスリピートするのも無理はない。

本当迷惑以外の何物でもない、こんな意地を持ってしまったこと。

でもそれでもわたしはわたしの我儘を通したい。


「自分の身を守れるほどの護身術もないから戦えないし、焦凍君に迷惑かけるだけかもしれない、自分勝手だってわかってる、でも…一緒にいさせてほしい。」


本音を話そうとすると、どんどん言葉が尻窄みになってく。

さっきの勢いとかはどうした?なんて言われてもわかんないよ。


ここまで今までドキドキしたことない。

試験の時とかの心臓の鼓動の方がまだ耐えられた気がする。



「わかった、悪い、変なこと言ったな」


…全身に脱力感が駆け抜けた。当たり前だが、同時に恥ずかしさもじわじわと。


「い、いや…わたしも変なこと言ってばっかだから、ごめん。守ってとかそういうのはスルーして」

「…共犯者くらい守る。」


一緒にいれる反応がくればそれでいいと思っていた。

それでもあえて共犯者って言ってくれてることがたまらなく嬉しい。


これが神様の試練の一つだとしたら、わたしはうまく乗り切れただろうか?
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