夢追う君に、手を伸ばし U

□神様の試練
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そうだ、これは記憶にあった。


『もうこれから家で、俺に近づくな』

この家に預けられて、しばらくした頃に言われた焦凍君からの言葉。

焦凍君がどういう表情だったかも全部覚えてる。

だってわたしも本当はすごくショックだったから。

何も力になれない自分の無力さを痛感してたから。

頑張って平気にしていた。でも本当は悔しくて悔しくて、背中で隠しながら拳をぐっと握ってた。





「次は、学校か。」


ぼそっと呟いて、今までを振り返る。

家ではダメだけど、学校はみんなにばれないようなほんの少しの会話くらいなら。帰り道に会えれば、同居の辻褄あわせくらいはできる。

限られた時間の中でもずっと仲良いままでできると思ってたけどそれは甘い考えだった。


話していいタイミングと話さないタイミング、切り替えるたび不器用なわたしたちに歪みは生じた。

今回も、そうやってどんどん疎遠になって。また距離の取り方もわからなくなってくんだろう。


(でも焦凍君がそういうのなら、わたしはこう言わなきゃいけないないよね…)

過去の自分が唇をかみ締めながらささやいてくる。

そうだよね、あなたも。

それが焦凍君のためだと思ったんだよね。




















だからごめんね。


「やだ。」


過去のわたしをビンタするかのように言い切る。

『わかった』なんて言ってたまるか。そんなお願い飲み込みたくない。



「敵連合にわたしが目をつけられる可能性がある、敵連合との戦いに巻き込まれる。はいそれ以外の理由は何?」

「…理由なんて」

「何かの作戦のうちじゃないと頷かないよ?」


物分りいいわたしなんてもうやめる。やめてやる。だって。


「だって、共犯者って言ったでしょ?先の約束の方が有効だよね?」

「あれ昨日だけじゃねえのか」

「…えーと…敵連合を倒すまでに決まってるでしょ!」

「今考えたよな。」


むちゃくちゃだ。

でもなんとしても引き延ばさないと。

それくらいわたしは今必死になってる。

過去の自分に抗おうと必死になってる。


「わたしだって警察の人が帰ってから色々考えたよ!むしろ当事者の方が考えるよ!こういうこと!」


焦凍君に話しかけないだけじゃなくて。雄英やめてみるとか、轟の家からでるとか。それこそ海外移住まで。

相手の出方も考えて、ふと思ったことがあった。


「でも敵連合に踊らされて高校生活無駄にしたくないの!」

「敵連合どころか、警察だって疑ってたらお前を助けねえ可能性だって。」

「焦凍君が守ってくれればいいでしょ!」
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