夢追う君に、手を伸ばし U

□神様の試練
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「じゃあね、色々とすまない。今度改めて謝罪をさせてもらうよ。お母さんに代わるね。」


一区切りついたところで、一瞬だけ保留音が流れて女性の声になる。


「もしもし」


ああ、これだけでもうほっとできる。


「お母さん、今度は警察署にいるの?ハードスケジュールお疲れ様」


せっかく有休とったのに日本満喫せずに終わっちゃうのか…重鎮というのも問題だ。


「手術ほどハードではないよ。あなたを訪ねた警察の人に文句言えるくらいだから。」

「文句言っちゃったの!?」

「仕事で呼び出された後に娘を疑ったってこと聞かされたから。本当に警察は神経逆なでするのがうまいね。」

「お母さん、落ち着いて、わたしも落ち着いたから。」

「結論から言うと、容疑者からは外れてない。」


…それ言っちゃう?

確かにあんな質疑応答で容疑者から免れられるとは思ってないけれども!


「というより、あの事件の現場にいた人全員容疑者みたいだから。それに巻き込まれただけ。内通者の確率としてはヒーロー科の生徒と同程度として見られてるかな。」

「お母さん、その情報流しちゃっていいの?警察の人に口止めされてない?」

「独自で得た情報だから大丈夫、わたしの状態把握は嘘も見抜けるって知ってるでしょ?」

「初耳です。」


嘘も見抜ける?じゃあ今までのわたしたちのやり取りとかも…


「じゃあね、あと近々メールするかもしれないからチェックはしておいて」

「あっ、待っ」


今回は急いでもないだろうにまたぶちっと切られた。これもうお母さんの癖なのかもしれない。

にしても"近々メール"なんてやけに改まって言うな。いつもメールしてるのに。




手元に表示されてる通話時間は思ったより短かった。

現状は何も変わってないのに、結構落ち着いてる自分がいることに驚く。


なんだろ、お母さんが冷静じゃなかったから、こっちもが冷静にならなきゃ感じ。

今はそれに救われてる。
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