夢追う君に、手を伸ばし U
□神様の試練
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「美恵、携帯。」
「あっ。」
携帯に着信母の文字が出てくる。
マナーモードにしてたから音は鳴ってないのに、よく気づくな焦凍君。
事件の後だから神経鋭敏なのかも、動物か。
「もしもし?お母さん?」
廊下に出て、耳にあてるが…。
「やあ、伍代さん、塚内だけど。」
聞こえるのはいつもの母の声じゃなくて、少々柔らかめだが男性の声。
誰だ?切りたくなる衝動もあったが、頭の中でひっかかるものがあった…塚内、検索。
知り合いに塚内という人、一人ヒットしてる。その人物は…あ。
「つつつ塚内刑事!お、お。お久しぶりです!すすすすみません!」
「いや、一昨日会ったんだけどね。」
そうでした、八百万さんの病室で会いましたね。というよりなんでこれお母さんの携帯じゃ…まさか!
「わたしで犯人確定ですか?お母さんのとこまで事情聴取ですか?え?え?」
ふと少年法という言葉が浮かんだ。わたしはまだ15歳だから、これお母さん逮捕されるパターンじゃ…?
「ちゃんと説明するからまず深呼吸しようか。」
「は、はい…」
すみません。返事をするも、過呼吸のような息遣いしかできません。
「君のお母さんには爆豪君の状態が大丈夫か警察署まで診てもらいに来ててね。それで携帯を借りて…」
「爆豪君は無事ですか!?」
「あ、次はそっちの話題にいっちゃったか…大丈夫。洗脳されてる可能性もあったから君のお母さんに診てもらっただけで、もう家についてる頃だと思うよ。」
わたしを落ち着かせようとしてくれるのか、めちゃくちゃゆるい声と雰囲気…いや塚内刑事これが素だ。
でもだいぶ頭の中が整理ついた。
「そうですか…すみません、話題それました。」
塚内刑事がお母さんに会ったのは仕事で…ならこの電話はなんのために?
「謝らないといけないなって思ったんだよ。」
「え?何がです?」
「この件を扱ってる同僚たちが勝手に君の家に行ってしまったみたいだね。敵受け取り係が解決できる事件かもしれないって先走って、片っ端から疑ってかかってしまったようで。今上の人に怒られてるよ。」
「塚内刑事が謝らなくても…。えっとそれよりわたし…」
わたしはまだ容疑者ですか?ふと思ったけどその質問は引っ込めた。違うと言われても、どうせ疑ってしまう自分である。
「わたしの方も、緊張してうまく説明できなくてすみませんって同僚の方々に伝えてください。」
「…他にも伝えておけるけれど。文句とか?」
「……」
確かに今心がささくれ立ってるのは警察の人が来たのが始まりだけど、気づかないうちに疑われてた方がよりショックだった気がする。
それに…。
「文句なんてないです。」
警察の人が疑ってくれるからヒーローは動けてる、お父さんもよくそう言っていた。
それに、ちゃんと仕事をしている人のどこに文句をつければいいんだろうか。
「…そうやって言ってくれてるだけでありがたいよ。」