夢追う君に、手を伸ばし U
□記憶の補填
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昨日のオールマイトの戦い、情報好きヒーロー好きなわたしは勿論リアルタイムで…
見れなかった。理由は経緯も含め以下に記そう。
夕食を冬美さんと二人で食べて、片付けして、また居間で一緒にテレビ見て。
そんな時雄英の謝罪会見のニュースがふっと消えた。
そして速報と同時に現れた神野の無残な光景。
前のめりになりつつオールマイトの姿を視界にとらえたのだが、すぐ黒画面が広がって…。
『冬美さん?え?なんでテレビ切っちゃうんですか?』
『美恵ちゃん、今日は早く寝ようか?』
『え?今なんかオールマイト…』
『寝ようね、あと自分の部屋のテレビはコードを切っておいて、ね?』
一目見てやばい雰囲気を察知したらしい冬美さんから規制をかけられた。それが第一の理由。そしてその後も…
『美恵か?』
『焦凍君?え?今?』
『神野だ、爆豪は救出できた。全員今のところ無事だ。それと、テレビは見ねえほうがいい』
『え?テレビって…。』
『明日には帰る』
通話時間20秒の電話で焦凍君にも止められてしまったという第二の理由。
総括すれば、轟家は大黒柱を除き、わたしに過保護だったというわけだ。…やばそうな映像はわたしに見させない。
それでも、一瞬だけ見えた神野の光景で確かだったのはオールマイトが本当の姿を社会に晒したこと。
それはわたしと共有していた秘密が一つ減ったことも意味していた。
「別に秘密共有は大変じゃなかったよ?オールマイトが弱ってることなんて誰も疑ってなかったし。あ、そうだ、お母さんに聞きたいことあったんだけど。」
「ん?」
「お母さんはお父さんを見送る時どうしてた?」
「……急に何?」
突拍子もないこと言ってしまった自覚は勿論あるけれど、どうしても聞きたかった。
どう見送るのが正解なのかを知りたかった。
「まあ教えてよ。そういうこと考える機会があったというか。」
「機会?まさか焦凍君にプロポーズされた?」
「されてない。」
お母さんはこういうところでネジ抜けてる。
あっでも、ヒーローの妻になれば確かに考えるから筋は通ってるのかな。